産休・育休はしっかり取るが吉!? 早期復帰の方が仕事のチャンスが減るという研究結果
一刻も早い休暇からの復帰が望まれていると考えがちだが…(写真はイメージ) FamVeld-iStock
<産休及び育児休暇は長く取る女性の方が仕事に復帰しやすいとの研究結果がドイツで発表された>
アンゲラ・メルケル首相のお陰か、女性がしっかりと社会進出しているというイメージがあるドイツ。確かに職についている女性の割合は75%(20〜64歳)と高いが、大企業でトップに立っている女性の割合は12%で、フランス、イギリス、ポーランド、スウェーデンとの比較では最下位だという。(南ドイツ新聞)
だからこそ、独ツァイト紙に掲載された、「短い育児休暇は、女性のキャリアを妨げる」という記事に驚いた。一刻も早く職場復帰することが望まれていると思っていたからだ。
これは、ベルリンの社会科学者レナ・ヒップ氏の研究による。架空の求職願いを700通書いて、様々な会社に送るというものだ。架空の「求職者」は、3歳の子どもがいる設定で、正社員への職を希望。履歴は同じだが、唯一変えたのが、この3歳の子どものために取った育児休暇の長さだ。
その後、面接に呼ばれるかどうかを比較したところ、2カ月の育児休暇を取った女性が面接に呼ばれる確率は、13.9%、1年の育児休暇を取った女性が面接に呼ばれる確率は、21.7%と、倍近くに上がったのである。
ヒップ氏は、研究の最後に学生たちとラボでの実験を行い、育児休暇を長く取った女性の方が、「より知性が高く、高いポジションにつく能力がある」と評価されたという結果を出した。育児休暇を長く取る人の方が、人のいうことに耳を傾けて心が暖かく、勇気がある一方、早く復帰する人はエゴイストで、他人に優しくないというのである。
男性でも同様の実験を行ったが、育児休暇の長さは、面接の招待の有無には全く関係がなかったという。
母として子どもに割く時間が長い方が、いい女性? 育児休暇をしっかり取ることに対して批判がないのは良いとしても、意外にまだコンサバティブな、ドイツの「母」の像が見えてきた。
育児休暇の夫婦の分担と給与の男女差
ドイツでは両親合わせて14カ月までの育児休暇を取ることができ、最長3年間までは、職場への復帰が保証されている。この長さはヨーロッパでも最長。では男性と女性が当分に育児休暇を取るかというとそうでもなく男性が2カ月、女性が12カ月と分担することが多いのだそう(連邦家族・高齢者・女性・青少年省による2016年のファザーレポート)。
南ドイツ新聞によれば、スイスの男性はたった1日しか育児休暇が取れず、女性は3ヶ月だそうだからそれに比べればはるかに状況はよい。ドイツでの育児手当は、子どもが生まれる前の平均賃金の手取り65〜67%までが受給できる(月額が1000ユーロ以下の場合は、100%。最高、月額2770ユーロまで)。意外にも(?)ロシアでは出産前後合わせて140日間、それまでの平均賃金が支払われるという。これはドイツより長い。