最新記事

サイバー攻撃

ロシア系ハッカーの標的にされたオーストラリア データ漏えいに怯える市民たち

2022年12月4日(日)10時52分
メディバンクのロゴ

オーストラリアで弁護士として働くエマさん。同国最大の民間健康保険会社が大規模なサイバー攻撃に遭い、自身の精神疾患に関する情報が漏えいしたと知った時、キャリアが危険にさらされるのではないかと、恐怖を感じたという。写真はメディバンクのロゴ。豪シドニーで2014年10月撮影(2022年 ロイター/David Gray)

オーストラリアで弁護士として働くエマさん。同国最大の民間健康保険会社が大規模なサイバー攻撃に遭い、自身の精神疾患に関する情報が漏えいしたと知った時、キャリアが危険にさらされるのではないかと、恐怖を感じたという。

豪メディバンクがハッキングされた今回の事件では、1000万人近くのオーストラリア人の情報が流出した。エマさんもその1人だ。これを含めた、有名企業などを対象にした一連のサイバー攻撃を受けて、豪政府は個人情報を保護する法律の改正に向けた作業を加速し、企業に顧客データ保護の対策を強化するよう要請した。

警察は、ロシア系のサイバー犯罪者らが今回の犯行を実行したとの見解を示している。ハッカーらは身代金を要求した後、ダークウェブ上に少なくとも1600人分の機密なカルテ情報を公開したという。

「ネット上に自分の病歴が載っているかもしれないと考えると、不快でならない」と、41歳のエマさんは語った。エマさんは、名字を伏せることを条件にインタビューに応じた。

「精神疾患に関する情報が公開されれば、仕事に戻れなくなってしまうかもしれない。だからとても辛い思いをした」

こう話すエマさんは、大うつ病性障害と慢性の心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱えており、2021年12月から病気を理由に休職している。

ハッカーらは、エマさんの保険請求歴や診断歴だけでなく、氏名や生年月日、住所、電話番号、メールアドレスまで入手した。

センシティブ情報や保護・機密データが、アクセス権を持たない者によって複製または閲覧、盗難、使用されることをデータ漏えいという。より多くのデータが政府や企業によって収集され管理されるようになるにつれ、こうした事例が各国で増えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中