最新記事

医療

子どもの「朝起きられない」は病気、でも薬をただ処方されたら要注意

2022年3月18日(金)10時40分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

森下医師によれば、起立性調節障害は、体質、性格、外部からの環境の3つの要因が相互作用的に働いて発症する。3つのうち、どの要因が強いかによって、おおむね4つの型に分類される。

●体質型
生れつきの体質、年齢に伴う自律神経機能の乱れによる身体機能の変調によるもの。

●疲労型
何かに集中し、頑張りすぎたために身も心も疲れ果てた結果、自律神経機能が乱れ、抑うつとなり、起立性調節障害を発症する。

●ストレス型
友人関係、いじめ、勉強の悩み、家庭の問題など、精神的なストレスが原因となっているタイプ。

●感染後型
風邪で発熱した後に、症状が出るタイプ。詳細は不明だが、細菌やウイルス感染が自律神経のバランスを崩すと考えられている。

cannotwakeupbook20220316-2.jpg

chameleonseye-iStock.

薬物治療だけでは効果が上がらない理由

起立性調節障害の治療に必要なのは、「全人的医療」だと森下医師は強調する。

起立性調節障害は、身体だけでなく、心理面の問題を含む場合がある。「身体」はもちろん、集中できない、落ち込むなどの「心理」の問題や、子どもに悪影響を及ぼす周辺環境である「社会」、自分への信頼の問題である「実存」など、子どもを取り巻く要素も含めて考えることが不可欠だ。

一般的に、起立性調節障害の治療は薬物療法が第一歩だ。小児科を受診し、起立性調節障害と診断されると、多くの場合、血圧を上げる昇圧剤が処方される。血管の収縮剤やビタミン剤などを使うこともある。

しかし、森下医師によると、これらの薬物治療だけでは効果がなかなか上がらないという。

その理由は、起立性調節障害は全身に分布する自律神経の機能不全にもかかわらず、これらの薬は循環系の一部にしか作用しないためではないかと言う。森下医師のクリニックでは、それらの薬と漢方薬を併用している。

起立性調節障害の背景に、悩みごとや睡眠の問題、疾病利得など、身体以外の問題が隠れていると、薬だけで解決することは難しい。それらの問題に対し、状況に応じた対応が必要になる。

その対策の一つとして森下医師が勧めるのが、「行動日誌」だ。起立性調節障害の子どもは、「だらだらした毎日」を過ごしていることが多い。この生活が長く続くと、中味のない生活に後悔だけが残っていくことになる。

そこで、自分が具体的にどんな生活をしているかを確認するための方法が「行動日誌」になる。

食事や入浴、入眠や起床などを記録していくことで、自分の生活パターンを知ることができる。エピソードや気持ちの動きなどを細かく記入していくことで、生活に悪影響を及ぼしている要因を見つけることにもつながる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米・ウクライナ首脳会談、和平へ「かなり進展」 ドン

ビジネス

アングル:無人タクシー「災害時どうなる」、カリフォ

ワールド

中国軍、台湾周辺で「正義の使命」演習開始 実弾射撃

ビジネス

中国製リチウム電池需要、来年初めに失速へ 乗用車協
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中