最新記事

医療

子どもの「朝起きられない」は病気、でも薬をただ処方されたら要注意

2022年3月18日(金)10時40分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

1週間分の行動日誌ができたら、日々のパターンを見直す。森下医師が着目するのが、睡眠の規則性である。毎日の睡眠の時間帯がバラバラだと、一日中眠気が覚めなくなってしまうからだ。

早寝早起きではなくても、決まった時間に起きて寝るようにする。規則性がある睡眠が取れるようになったら、今度は無理のないペースで、睡眠の時間を早めていくようにする。

また、入浴や食事の時間の規則性や運動を取り入れる、行動に決まりごとを加えていくなど、上手に「だらだらする」ことが大切だ。

cannotwakeupbook20220316-3.jpg

Valiantsina Halushka-iStock.

親が子どもに伝えるべき「2つの倫理」

森下医師は、親の思い込みや独りよがりの価値観を子どもに押しつるのはよくないとしながらも、伝えるべき倫理として、次の2つを挙げる。

「つらくても、やらなければいけないことがある」
「自立心と考える能力を育てる」

これらは伝え方を間違えると、真意が伝わらずに親子関係を損ねてしまう恐れがある。上から目線にならず、同じ目線で冷静に話すことが大切だ。

お互いに気持ちが落ち着いている時間や場所を選ぶ。そして、「人間はやるべきことがある」と伝える一方で、「今は焦らなくていい」と付け加えることで子どもが責められていると感じなくて済む。

すぐに生活が変わるわけではない。それでも、冷静に伝え続けることが大切だと森下医師は言う。

思春期に脳に刷り込まれたことは、一生残り、それが行動原理になっていくからだ。倫理観を芽吹かせるための種まきをしているという意識を持てば、親も焦らずにいられるようになる。

森下医師によると、親は「最終的にはよくなる」と信じることが大切であり、子どもは「信じてくれている、愛されている」と感じることが大切だ。人間は期待されるとその期待に添うように行動したくなる。

中学生の10人に1人がかかっていると言われる起立性調節障害は、決して他人ごとではない。本書は、その複雑な症状や原因を実例とともに紹介するもの。非常に分かりにくい病だからこそ、理解することの大切さを痛感させられる。

なお、起立性調節障害は主に子どもに見られるが、大人にも見られるという。そのため、朝起きられない、疲れやすい、立ちくらみが続くなどの場合は、神経内科の受診を考えてはどうだろう。

新装版 うちの子が「朝、起きられない」にはワケがある
 ――親子で治す起立性調節障害』
 森下克也 著
 CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米、英の医薬品関税をゼロに NHS支出増と新薬価格

ビジネス

インタビュー:USスチール、28年実力利益2500

ワールド

ネタニヤフ氏、恩赦要請後初の出廷 大統領「最善の利

ワールド

ロシア安保会議書記、2日に中国外相と会談 軍事協力
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 5
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 9
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 10
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中