最新記事

サイエンス

超加工食品 脳の快感回路に作用する危険性を、欧米科学者が警告

KILLED BY FAKE FOOD

2022年1月31日(月)11時05分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

FONTINAーMOMENT/GETTY IMAGES

<「不自然」な食品が大手食品メーカーに莫大な利益をもたらす一方で、肥満と生活習慣病を激増させる元凶になっている>

ケビン・ホールは数年前、ある説の間違いを証明しようと思い立った。

それは、アメリカ人がますます太って不健康になっているのは、食品メーカーが売り上げアップのために手の込んだ製法で食品を加工するせいだという説だ。

いや、そんなことはないとホールは考えた。むしろ問題はアメリカ人が脂肪や砂糖を取りすぎて、摂取カロリーをオーバーしていることだろう。手の込んだ加工が肥満を招くなんて、そんなばかな......。

米国立衛生研究所(NIH)傘下の国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所の上級研究員であるホールは、自身の仮説を実証するために対照実験を行うことにした。

1人5000ドルの謝礼で被験者を20人募り、メリーランド州ベセスダにあるNIHの施設に1カ月滞在してもらう。被験者を2群に分け、一方には特殊な製法による加工をしていない自然な食品を、もう一方には太りすぎのアメリカ人がよく食べる加工食品を提供する。

一定期間に提供する食事の総カロリーと砂糖や脂肪の量は2群とも同じに設定したが、食べる量は好きにしていいと被験者に伝えた。

実験の結果、ホールは自分の間違いを認める羽目になった。加工食品を食べたグループは、もう一方のグループに比べて平均して1日に500キロカロリー多く摂取し、1週間に約0.45キロ体重が増えたのだ。

しかも、このグループも自然な食事に切り替えると、増えた分の体重を落とせた。つまり、食品メーカーがどんなマジックを使っているにせよ、加工食品は人を太らせるということだ。

この実験結果とその後に発表された他のデータを見て、公衆衛生や栄養学の専門家らが規制当局に対策を求めるようになった。

砂糖などの取りすぎは健康に害を及ぼすと警告するなど、ちょうど1990年代にたばこ会社のマーケティングを規制したような措置が必要だというのだ。

肥満大国アメリカを生んだ罪

「食の危機」とも言うべき今のアメリカの加工食品の消費状況は、半世紀以上も前、規制当局が大手たばこ会社に歯止めをかける前の喫煙状況に気味が悪いほど似ている。

ただし今回、人体に有害で依存症を引き起こしかねない製品を売り込んでいるのは大手食品メーカーだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 9
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中