最新記事

海外ノンフィクションの世界

あの『アルマゲドン』で滅亡を避けられる!? 『コンテイジョン』だけじゃない「予言の映画」11選

2021年3月9日(火)21時10分
藤崎百合 ※編集・企画:トランネット

第1章では、「ウイルスとは何か」「なぜ現代社会では新型ウイルスが発生・蔓延しやすいのか」、そのほか突然変異・免疫系・ワクチンについてバランスよく説明されている。

コロナ禍により、多くの人は否応なくウイルスや伝染病について詳しくなっただろう。この章を読めば、最近になって知った専門的知見がいかに分かりやすく的確にまとめられているかを実感できるはずだ。

映画や科学の面白ネタ、歴史的な経緯や最新の研究成果がふんだんに盛り込まれ、イギリス人らしいウィットにあふれる会話やコラムが息抜きとなって、読む者を飽きさせない。

『ジョーズ』『ターミネーター』から『エルム街の悪夢』まで

さて、予言者ではないにしろ、先見性に優れた2人が選んだ残りのテーマが気になるのではないだろうか。駆け足となるが紹介しよう。

第3章は「捕食動物」。捕食と進化の深い関係、さまざまな捕食動物からの逃げ方など。ここで取り上げられる映画は『ジョーズ』(1975年、スティーヴン・スピルバーグ監督)、動物パニック映画の金字塔だ。

第4章は「人工知能」。ロボットの自我の芽生えと、自我の有無によらず危険であることについて。映画は、人工知能が支配する未来世界を背景とする『ターミネーター』(1984年、ジェームズ・キャメロン監督)。

第5章は「不妊」で、精子数の大幅減少や環境ホルモンの問題、人工子宮の実験、幹細胞からの精子や卵子の作製について。ここでは、人類が生殖能力を失った近未来の描写がリアルな『トゥモロー・ワールド』(2006年、アルフォンソ・キュアロン監督)を取り上げている。

第6章は「気候変動」。異常気象の脅威と気候コントロールの可能性など。映画は『ジオストーム』(2017年、ディーン・デヴリン監督)。衛星での気象制御と同時多発的異常気象が描かれた作品だ。

第7章は「不眠と悪夢」。夢を操る技術を身につける方法などにも触れている。映画はなんと、殺人鬼が夢の中で人々を襲う『エルム街の悪夢』(1984年、ウェス・クレイヴン監督)。

お次は「植物」だ。この世界の覇者であり私たちをコントロールしている植物の、知性・コミュニケーション能力・学習能力について。題材となる映画は、50年以上前の作品。植物が人間を襲い世界を支配する『人類SOS! トリフィドの日』(1962年、スティーヴ・セクリー監督)だ。

第9章は「老化」。老化とは何か、血液や糞便を使う抗加齢技術、そして老化に追いつかれない方法について。映画は『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008年、デイヴィッド・フィンチャー監督)で、年老いた姿で生まれ、若返っていく男の生涯が描かれる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中