「健康寿命」を2歳伸ばす...日本生命が7万人の全役員・職員で挑む「がん検診」活動とは
がん検診受診推奨活動の様子
<がん検診受診率向上に向けた取り組みを全国で展開する日本生命保険相互会社。保険営業の枠組みを超え、地域社会全体の健康増進を目指している>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
SDGsの3つ目の目標である「すべての人に健康と福祉を」。この目標が設定された背景には、貧困地域の医療格差や感染症拡大といった憂慮すべき事態だけでなく、がんや生活習慣病など「非感染性疾患(NCDs)」の諸問題が挙げられる。
特に日本では国民の約2人に1人、年間では約100万人ががんに罹患すると言われており、がんはいわゆる「国民病」だ。しかしながら、日本のがん検診受診率は約50%と低い割合に留まっている。
こうした課題に対し、がんの早期発見・治療の重要性を広く啓発する活動を進めているのが、日本生命保険相互会社だ。
7万人で支えるがん検診受診勧奨活動
日本生命は、がん検診の受診率向上を地域社会の重要な課題として位置づけ、2023年度から全国規模で「がん検診受診勧奨活動」を本格展開している。
全国に99支社・1466拠点・約5万人の営業職員を持つ同社は、このネットワークを活かし、地域住民に対して、がん検診に関する情報提供やアンケート収集、医師やがんサバイバーを講師に招いたセミナー・イベントの開催、検診キットの配布などを実施してきた。
活動の大きな特徴は、自社の顧客に限定することなく、広く地域住民全体に働きかけている点だ。2023年度のアンケートで得た声は56万名分に上り、そのうち78%が「がん検診への理解が深まった」と回答した。
2024年度は全国約7万名の全役員・職員が、9月にがん検診受診勧奨活動を一斉実施(うち営業職員約5万名は、7月29日~11月24日にかけて活動を実施)。活動途中の9月12日時点までに収集したアンケート数は約59万件と既に昨年度を上回っている。
また、昨年度のアンケートで「(がん検診を)受診していない」と回答した人のうち約4人に1人*が今年度は「受診している」に変化していた。
*(昨年度の全回答者は11.5万人。昨年度「受診していない」と回答した5.4万人のうち今年度は「受診している」と回答した人は1.2万人)
さらに、得られたアンケート結果は47都道府県別の報告書にまとめられ、自治体で活用されている。2024年6月に宮城県で開催された「市町村がん検診担当者会議」では、2023年度の報告書を日本生命の研究員が直接報告するなど、行政のがん対策における有益な資料となっているのだ。