最新記事
SDGsパートナー

途上国でも生鮮品を適温で安全に運べる物流網を...コールドチェーンの確立でフィリピンの物流改革に挑む大日本印刷(DNP)が見据える未来

2024年11月19日(火)13時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
ラストワンマイルの実証実験で「DNP多機能断熱ボックス」を活用して配送するドライバー

ラストワンマイルの実証実験で「DNP多機能断熱ボックス」を活用して配送するドライバー

<東南アジアでは、生鮮食品や冷凍食品を適切な温度で運ぶことができず、食品廃棄、健康被害につながっているケースがいまだに見られる。DNPは、そうした状況の改善を目指して、フィリピンにおけるコールドチェーン(低温物流)の整備に乗り出した>

世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇

フィリピンで低価格・高効率なコールドチェーンの実証実験をスタート

スーパーやコンビニでは、常に新鮮な野菜や魚介類が購入でき、病院やクリニックに行けば高品質な医薬品を使った医療が受けられる。

日本では、そうした安心安全な生活があたりにまえなっているが、その「あたりまえ」を享受できるのは、必要なものを最適なタイミングで届けるための物流網と、適切な温度で輸送できるソリューションがあるからこそ。

生産地から消費地までの輸送で、生鮮食品・冷凍食品の品質を保つのが難しい環境であれば、食品の大量廃棄や健康被害を引き起こす可能性が高いだろう。

事実、東南アジアやアフリカでは、野菜やフルーツ、鮮魚などが適切な温度管理がなされないまま配送され、品質の劣化や大量廃棄につながってしまうケースが少なくない。

経済的に大きく成長し、食文化が多様化しているにもかかわらず、十分なコールドチェーン(低温物流)のインフラが構築されていないからだ。

そうした状況を受けて、国土交通省ではコールドチェーンの需要が高まるASEAN諸国において、日本式のコールドチェーン物流サービスの普及に着手。物流事業者や関連団体とともに、高品質で環境に優しい物流システムの実現に取り組んでいる。

そんななか、特にフィリピンのコールドチェーン構築に力を注いでいるのが大日本印刷株式会社(以下、DNP)だ。

DNPは2018年以降、日本発のスタートアップGlobal Mobility Service株式会社(以下、GMS)とともに、フィリピンにおけるモビリティサービスの事業開発を行ってきたが、活動を続けるなかで物流の課題を実感。

2022年に、GMSおよび情報・通信システムの構築を手がけるユニアデックス株式会社と、合弁企業3Q DASH TECHNOLOX(以下、3QX)を設立し、新たなコールドチェーンソリューションの開発に乗り出した。DNPモビリティ事業部の神戸博文氏は、現在の活動についてこう話す。

「フィリピンでは冷蔵・冷凍車による配送が高価で、一部のスーパーやコンビニを除いてコールドチェーンが普及していません。また、配送事業者の多くがドライバーへの配送指示を紙や電話で管理しているため、リアルタイムで配送状況を把握するのも難しい状態です。そうした課題の解消に向けて、物流の最終拠点からエンドユーザーの手元までのラストワンマイルに焦点をあてながら、低価格で効率的なコールドチェーンの実証事業に取り組んでいます」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中