途上国でも生鮮品を適温で安全に運べる物流網を...コールドチェーンの確立でフィリピンの物流改革に挑む大日本印刷(DNP)が見据える未来
独自の熱設計技術を使って、高性能な断熱ボックスを開発
同社の取り組みには、大きな特徴が2つある。「DNP多機能断熱ボックス」と呼ばれる、オリジナルの資材を採用していることと、3QXが運用するDNPのデジタル配送管理システムを使って、配送業務の簡易化を図っていることだ。
DNP多機能断熱ボックスは、食品パッケージの印刷で培った熱設計技術と独自のIT技術を組み合わせて開発されたもので、電源を使うことなくボックスの内部温度を長時間一定に保つことができる。
つまり、この断熱ボックスを使えば、気温が高いなかで荷物の積み替えを行ったり、ラストワンマイルに常温車を利用したりしても、コールドチェーンが途切れることはないのだ。
実証事業では主に冷凍食品の配送に使われているが、冷蔵・冷凍車をチャーターするより低コストで温度管理ができるため、費用面の問題で常温商品しか扱えなかった小規模店舗にも、冷凍食品の配送が可能になったという。
一方のデジタル配送管理システムでは、従来アナログで行っていた配送ドライバーや荷主とのコミュニケーションを、専用のスマートフォンアプリで管理。配送オーダーの受領・登録、ドライバーの手配、配送進捗状況管理、ドライバーの位置情報などがリアルタイムで確認できる仕組みを作り、配送ミスの削減や配送時間の短縮を実現した。
「DNP多機能断熱ボックスは、電源なしで繰り返し使用できるため、二酸化炭素排出量削減や発泡スチロールなどの使い捨て資材の削減にもなります。現在は、高速バスやフェリーといった、公共交通のカーゴスペースにDNP多機能断熱ボックスを積載し、ラストワンマイル以外のコールドチェーンを構築する取り組みも進めています」(神戸氏)
DNPでは、2025年の早い段階でのサービス開始を目指しており、将来的にはベトナム、インドネシアなどでもコールドチェーンの整備を行っていく計画だ。
このソリューションによって高品質なコールドチェーンが確立されれば、配送時の食品ロスの削減だけでなく、農家・漁業関係者の収入向上やドライバーの労働機会の創出などにもつながるはず。
フィリピンをはじめとする東南アジア諸国の持続可能な社会作りを前進させる事業として、今後も注目していきたい。
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