最新記事
SDGsパートナー

途上国でも生鮮品を適温で安全に運べる物流網を...コールドチェーンの確立でフィリピンの物流改革に挑む大日本印刷(DNP)が見据える未来

2024年11月19日(火)13時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

独自の熱設計技術を使って、高性能な断熱ボックスを開発

同社の取り組みには、大きな特徴が2つある。「DNP多機能断熱ボックス」と呼ばれる、オリジナルの資材を採用していることと、3QXが運用するDNPのデジタル配送管理システムを使って、配送業務の簡易化を図っていることだ。

DNP多機能断熱ボックスは、食品パッケージの印刷で培った熱設計技術と独自のIT技術を組み合わせて開発されたもので、電源を使うことなくボックスの内部温度を長時間一定に保つことができる。

DNP多機能断熱ボックス

「DNP多機能断熱ボックス」を使用すれば、冷凍食品を電源なしで低温輸送できる

つまり、この断熱ボックスを使えば、気温が高いなかで荷物の積み替えを行ったり、ラストワンマイルに常温車を利用したりしても、コールドチェーンが途切れることはないのだ。

実証事業では主に冷凍食品の配送に使われているが、冷蔵・冷凍車をチャーターするより低コストで温度管理ができるため、費用面の問題で常温商品しか扱えなかった小規模店舗にも、冷凍食品の配送が可能になったという。

一方のデジタル配送管理システムでは、従来アナログで行っていた配送ドライバーや荷主とのコミュニケーションを、専用のスマートフォンアプリで管理。配送オーダーの受領・登録、ドライバーの手配、配送進捗状況管理、ドライバーの位置情報などがリアルタイムで確認できる仕組みを作り、配送ミスの削減や配送時間の短縮を実現した。

デジタル配送管理システムを確認するドライバー

ドライバーがデジタル配送管理システムを確認している様子

「DNP多機能断熱ボックスは、電源なしで繰り返し使用できるため、二酸化炭素排出量削減や発泡スチロールなどの使い捨て資材の削減にもなります。現在は、高速バスやフェリーといった、公共交通のカーゴスペースにDNP多機能断熱ボックスを積載し、ラストワンマイル以外のコールドチェーンを構築する取り組みも進めています」(神戸氏)

DNPでは、2025年の早い段階でのサービス開始を目指しており、将来的にはベトナム、インドネシアなどでもコールドチェーンの整備を行っていく計画だ。

このソリューションによって高品質なコールドチェーンが確立されれば、配送時の食品ロスの削減だけでなく、農家・漁業関係者の収入向上やドライバーの労働機会の創出などにもつながるはず。

フィリピンをはじめとする東南アジア諸国の持続可能な社会作りを前進させる事業として、今後も注目していきたい。

ニューズウィーク日本版 ガザの叫びを聞け
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月2日号(11月26日発売)は「ガザの叫びを聞け」特集。「天井なき監獄」を生きる若者たちがつづった10年の記録[PLUS]強硬中国のトリセツ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、EUに凍結ロシア資産活用の融資承認を改

ワールド

米韓軍事演習は「武力」による北朝鮮抑止が狙い=KC

ワールド

米ウ代表団、今週会合 和平の枠組み取りまとめ=ゼレ

ワールド

ローマ教皇、世界の紛争多発憂慮し平和訴え 初外遊先
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 9
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 10
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中