最新記事
SDGsパートナー

海藻養殖で「海の砂漠化」を防ぐ...「ブルーカーボン推進」で海を守り、地域を盛り上げるヴェントゥーノの挑戦

2024年11月5日(火)11時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
Jブルークレジット取得検討会

産官民の3社連携では福岡初となる2025年度のJブルークレジット化に向けた「Jブルークレジット取得検討会」の様子(左から馬場糸島副市長、坂本糸島漁業協同組合福吉市区代表理事、中野ヴェントゥーノ社長)

<磯焼けによる「海の砂漠化」が進み、多くの地域で海洋生態系や漁業が危機に瀕している。株式会社ヴェントゥーノは、ブルーカーボンを創出する海洋環境保全に取り組み、環境と経済の両面で持続可能な未来を目指している>

世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇


世界中の沿岸で「磯焼け」が進行し、海の生態系や人々の暮らしに大きな影響を与えている。

磯焼けとは、コンブやワカメなどの海藻が大量に消失し、海底が「砂漠」のようになってしまう現象だ。当然、海藻を餌やすみかとしていた魚や貝はそこに住むことができなくなり、海洋生態系全体のバランスが崩れることになる。

この現象が知られるようになったのは前世紀からだが、近年磯焼けは急速に深刻化しており、日本の漁業も大きな打撃を受けている。

海藻の可能性を引き出すことで海も産業も再生

こうした状況に危機感を持ち、地域と連携して対策に乗り出したのが株式会社ヴェントゥーノだ。福岡市に本社を置く同社は、健康食品や化粧品の製造・販売から原料開発など幅広い事業を展開。その主力製品には、海藻のぬめり成分「フコイダン」が使用されている。

1990年の創業以来「海藻」の可能性を追求してきた同社は、海洋環境保全にも力を入れ始めた。2021年6月、ヴェントゥーノは福岡県糸島市の漁業協同組合と「ブルーカーボン推進における地域貢献協定」を締結。ブルーカーボンとは、海洋生態系によって大気から水中に吸収されたCO2由来の炭素のことだ。このとき、光合成をする海藻は大きな役割を担う。

具体的には、従来廃棄されていたメカブ(ワカメの根)やアカモクを糸島漁協から継続購入することで、ワカメを養殖する漁業従事者の収入安定や生産効率・生産量の向上に貢献している。こうして藻場が再生されれば、それが磯焼け対策となる。海藻養殖をきっかけに天然の海藻の自生を促すことでブルーカーボンの創出を目指す同社のプロジェクトは、複合的に海の生態系を守る取り組みであり、あらゆるセクターに持続可能性をもたらしている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、156円台前半 FRB政策

ワールド

米下院特別委、中国軍の台湾周辺演習を非難 「意図的

ワールド

仏独英、中国の台湾周辺軍事演習に懸念表明 一方的な

ワールド

サウジ、イエメン南部の港を空爆 UAE部隊撤収を表
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中