肥料に燃料、接着剤にも...再資源化で産廃処分ゼロを実現した中日本カプセルの「ゼライクル」とは?
ソフトカプセルの製造時に発生するゼラチンの残渣。その量は年間300トン以上にも及ぶ
<主力商品の製造時に発生し、焼却処分する際に温室効果ガスを排出していた「ゼラチンの残りかす」を再資源化することに成功。その意義と多岐にわたる使い道を紹介する>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
世界全体で年間100億トン以上排出されている産業廃棄物。地球規模の環境汚染を防ぐために、どのように再資源化していくべきなのか。中日本カプセル株式会社は、ソフトカプセル製造の際のゼラチンの残渣(ざんさ)を肥料として活用する「ゼライクル」プロジェクトにより、産業廃棄物の抑制と持続的な食料生産の両立を進めている。
温室効果ガスの発生源を作物の肥料へと変えていく
工場や建設現場、水処理場、エネルギー施設などから排出される産業廃棄物。廃棄物工学研究所が2020年に公開した「世界の廃棄物発生量の推計と将来予測」によると、世界全体では毎年約100億トン以上もの産業廃棄物が排出されており、2050年の排出量は279.3億トンに達すると推計されている。
産業廃棄物の排出量は一般廃棄物の5~10倍。「つかう」手前の段階、「つくる」ことそれ自体が、多量のゴミを生んでいる。
工場廃水より生じた汚泥や建設廃材などは、放置すれば大気や水質、土壌汚染の原因となり、生態系や人々の健康に深刻な影響を及ぼす。
廃棄物や汚染を生み出すことなく、もう一度循環させていくためのポイントは「処理」ではなく、「再資源化」に考えをシフトしていくことだ。
ゴミだと思っていたものから、どうやって新たな「価値」を引き出すのか。
岐阜県大垣市に本社を置く中日本カプセルは、産業廃棄物の削減と持続可能な食料生産の両立を目指す一社だ。意外なゴミから有機質の肥料を製造する取り組みが注目を集めている。
1996年に創業した同社は、「ソフトカプセル」の生産を得意とするメーカーだ。ソフトカプセルとは、ゼラチンでつくった皮で液体を包み込み、球形・楕円形のカプセルに成型したもの。健康管理や栄養補給を目的とした健康補助食品、いわゆるサプリメントに使われている。