使用済みプラを資源に変える「特別」なリサイクル手法とは? レゾナックが示す資源循環モデル
2003年から稼働するプラスチック・リサイクルプラント「KPR」
<分別の必要がなく、発生するCO2は炭酸製品に有効活用。プラスチックのリサイクルに付き物の難しさを解決した「ケミカルリサイクル」の恩恵は一般消費者にも>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや製品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えのもと、ニューズウィーク日本版はこの春、「SDGsアワード」を立ち上げました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
焼却時に排出されるCO2や、海へと流出したプラスチックによる海洋汚染など、使用済みプラスチックをどう処理するかが今日、世界的な課題となっている。株式会社レゾナックは、使用済みプラスチックを化学的に処理して資源として再利用する取り組みによって、脱炭素社会、サーキュラーエコノミー(資源循環型社会)の実現を目指している。
使用済みプラスチックのケミカルリサイクルで資源循環モデル構築へ
使用済みプラスチックは世界が直面する喫緊の課題の一つだ。毎年少なくとも800万トンのプラスチックごみが新たに海へと流出していると言われている。鳥や海の生物がそれを誤って食べてしまう生物被害のほか、漁業・観光業などの産業に及ぼす悪影響も深刻だ。経済協力開発機構(OECD)は2018年、その経済的損失は年間130億ドル(約1兆4000億円)にも上るとして警鐘を鳴らした。
こうした課題を解決すべく、株式会社レゾナックは使用済みプラスチックのリサイクル事業を展開している。同社は昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が今年1月に統合してできた新会社だ。
前身の昭和電工時代の2003年に、使用済みプラスチックを分解してアンモニアの原料とするプラスチック・ケミカルリサイクルのプラント操業を世界でも類を見ない商業規模で開始。昭和電工創業の地、川崎事業所(神奈川県川崎市)で行われているこの取り組みがKPR(Kawasaki Plastic Recycle)事業だ。処理量は、2022年1月に累計100万トンを達成し、年間で約7万トンの使用済みプラスチックを処理している。
主に家庭から排出された使用済みプラスチックをガス化し、水素と一酸化炭素の合成ガスを製造。水素はホテルの燃料電池向けに提供するほか、アンモニア合成の原料とする。アンモニアは肥料や虫刺され薬の原料に使用されたり、火力発電所の脱硝用としてそのまま販売するだけでなく、自社内でアクリロニトリル(アクリル繊維の原料)やグリシン(食品保存料など)などの原料に使用。一酸化炭素は二酸化炭素に変換して、保冷用のドライアイス(宅配サービスや食料品、ワクチン輸送など)や炭酸飲料用の液化炭酸として利活用することで、一般消費者にも還元される仕組みだ。社外とも連携し、こうした循環モデルの構築を推進している。