最新記事
SDGs

世界一幸福な国は2035年カーボンニュートラル達成へまい進 社会変革を目指すフィンランドのスタートアップ企業

2023年10月16日(月)17時20分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

インフィニッティッド・ファイバー社のペトリ・アラヴァCEOとインフィンナを使った商品

インフィニッティッド・ファイバー社のペトリ・アラヴァCEO。ショールームには「インフィンナ」繊維を使用した商品が展示されていた。

インフィニッティッド・ファイバー社の繊維「インフィンナ」を使った衣類も、高品質なことは見てわかる。肌触りもとてもいい。同社のショールームにはカジュアルウェアからドレスまで、インフィンナ繊維を使用したファッションブランドの商品がずらりと並んでいた。トミー ヒルフィガー、アディダス、ラングラー、H&M、ZARAといった、よく知られているブランドだ。インフィンナを購入する契約を数年分交わしているブランドもあるという。購入するだけでなく、同社に投資するブランドもあるそうだ。

インフィンナは、消費者やリサイクル処理業者からの古着、繊維くずから生まれる新しい繊維。化学処理を施すが、有害な化学薬品ではない。

EUは他国への古着の寄付を禁じる予定で、将来はEU内で処理することが必要になる。インフィンナの需要が高まることは間違いない。同社は現在、大規模な工場をフィンランドに建設中。10年以内に工場を増やし、古着の廃棄問題に立ち向かっていく。

細胞培養で、環境破壊や食料危機に備える

食の分野の身近な環境問題対策というと、代替肉を中心とした植物製代替食品(ミルク、ヨーグルト、デザートなどの代替品)が思い浮かぶ。代替食品は、CO2排出量が高い畜産を減らすための良策だ。ヨーロッパでの代替食品の広まりは相当なものだ。ヨーロッパ13カ国の売上は、2020年から2022年の間に21%成長し、過去最高の58億ユーロに達した。それでも、こうした持続可能な食品が市場全体に占める割合はまだ小さいという。

日本でも植物製代替食品への注目は高まっているが、健康によさそうという関心の方が強いかもしれない。フィンランドでは、CO2削減と資源の保護、食料危機に対処するための代替食品の研究に熱が入っている。

フィンランド国立技術研究センター(VTT)の研究員たちと持続可能な食品のサンプル

フィンランド国立技術研究センター(VTT)の研究員たち。様々な、持続可能な食品のサンプル。

ヨーロッパ有数の研究機関といわれるフィンランド国立技術研究センター(VTT)の研究分野は多岐に渡る。ここで、持続可能な食品の開発の様子を見た。持続可能な食品は大きく2つに分けられる(昆虫食は除く)。いま述べたように植物から作る代替食品、もう1つは細胞を人工的に増殖させてタンパク質(プロテイン)と脂質を生産する細胞農業(細胞培養)だ。

日本では培養肉培養魚の開発が報じられている。VTTでは多数のプロジェクトがあり、目下、来春までの予定で国内10社と共同でプロジェクトを進めている。細胞培養で乳製品や主に養殖向けの飼料を作るといった計画だ。ちなみに、日本でも大きく報道された細胞培養で成功させたコーヒー粉末もVTTのプロジェクトだ。

各プロジェクトでは実現可能か、本当にサステナブルかといった、細胞農業を定着させていく戦略も練る。

企業経営
ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パートナーコ創設者が見出した「真の成功」の法則
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

フィッチ、ハンガリー格付け見通し引き下げ 総選挙控

ビジネス

10月経常収支は2兆8335億円の黒字=財務省

ワールド

中国機の安全阻害との指摘当たらず、今後も冷静かつ毅

ビジネス

バークレイズ、英資産運用大手エブリン買収を検討=関
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中