最新記事
ヘルス

「健康寿命を伸ばすなら海藻を食べよ」 医師が推奨、日本人特有の腸内細菌・酪酸菌は海藻から筋肉を増やせる

2023年6月30日(金)15時10分
江田 証(医学博士、江田クリニック院長) *PRESIDENT Onlineからの転載
ワカメサラダ

日本人は独特な腸内細菌によって、海藻類などで筋肉を増やすことができるという。 Kongsak - shutterstock


年をとっても元気でいるためにはどうすればいいのか。消化器内科医の江田証氏は「重要なのは筋肉を維持することだ。日本人独特の腸内細菌によって、海藻を食べることで筋肉の減少を防ぐことができる」という――。

※本稿は、江田証『超一流の腸活術 最高のパフォーマンスを生み出すための食事法と習慣』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

腸内細菌が乱れていると筋トレの効果が出づらくなる

みなさんのなかには「スポーツジムに通って筋トレをしている」という人も多いと思う。スポーツをしていて筋力をアップしたい、マッチョなボディに憧れている、ダイエットのため、ストレス解消できるから――理由はいろいろあるだろう。

それはともかく、適度な筋力、適切な筋肉量は健康長寿を達成する上で重要な要素である。実際、「太ももの筋肉が太い人ほど死亡率が減少する」という論文があるほどだ(※)。

※出典:Heitmann, Berit L., and Peder Frederiksen. "Thigh circumference and risk of heart disease and premature death: prospective cohort study." Bmj 339 (2009).

筋肉が少ないと、長期に入院するリスクが高まり、感染症にかかりやすくなり、死亡率が高まる。それに対し、筋肉が多いと、認知症にかかりづらくなり、がんにかかった時にも筋肉量が多い人ほどがん手術の予後が良く、抗がん剤や放射線療法が効きやすいことがわかっている。筋肉からは「イリシン」や「スパーク」といった「天然の抗がん剤」が分泌されているからだ。

ただ、筋トレをしている人なら「同じようなトレーニングをしていても、筋肉がつきやすい人とつきにくい人がいる」と感じることがあるだろう。

たしかに筋肉のつきやすさには、人によって違いがある。そして、その違いを生む要因のひとつに考えられているのが「腸内細菌の違い」なのだ。

意外かもしれないが「腸」と「筋肉」には非常に深い関係性があり、腸内細菌のバランスによって筋肉のつき方に違いが生まれる可能性が指摘されている。これを「腸筋相関(ちょうきんそうかん)」という。つまり、「腸内細菌が乱れていると十分に筋トレの効果が得られず、筋肉がつきにくくなる」といえるのである。

肉をほとんど食べずに肉体美を保つパプアニューギニア人

腸内細菌と筋肉の関係を語るときに、私はよく「パプアニューギニア高地人」の話を例に挙げる。

標高1500メートル超の高地に暮らすパプアニューギニア人たちはみな全身がみっちりとした筋肉で覆われており、日本人と比べてもはるかに筋肉質な体格をしている。

だが彼らの主食はサツマイモで、肉はほとんど口にしない(お祭りの際、年に2~3回ほど豚肉を焼いて食べることがあるようだが)。つまり、動物性たんぱく質をほとんど摂取していないのだ。彼らのたんぱく質摂取量は、私たち日本人の平均(1日あたり約80グラム)の半分ほどしかない。また「何か特別な筋トレをしている」というわけもない。

にもかかわらず、彼らは素晴らしい筋肉質の体をしている。ほぼサツマイモのでんぷん(糖質)だけで筋力や筋肉量を維持できているのだ。

東京アメリカンクラブ
一夜だけ、会員制クラブの扉が開いた──東京アメリカンクラブ「バンケットショーケース」で出会う、理想のパーティー
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石油大手2社への制裁でロシアは既に減収=米財務省

ビジネス

中国COMAC、ドバイ航空ショーでC919を展示飛

ワールド

カナダ議会、カーニー政権初の予算案審議入りへ 動議

ワールド

過度な依存はリスクと小野田経済安保相、中国の渡航自
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 7
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 10
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中