食後70分以内に散歩、筋トレ、階段の上り下り。血糖値スパイクは「食べたら動く」で防げる
まず、血糖値スパイクが頂点に達するときにじっとしていた場合、グルコースは細胞にあふれかえり、ミトコンドリアを圧迫する。するとフリーラジカルができ、炎症が増し、余分なグルコースが肝臓、筋肉、脂肪に貯めこまれる。
一方、グルコースが腸から血流に向かうときに筋肉を収縮させた場合、ミトコンドリアは高い焼却能力をもつようになる。ミトコンドリアはすぐ圧迫されたりせず、よろこんで余分なグルコースからATPをつくり、動いている筋肉に力を与える。次ページの持続血糖測定器のグラフを見れば、その違いは明らかだ。
こう考えることもできる。運動すると(繰りかえしになるが、10分の散歩でも役に立つ)、余分なグルコースはたまっていくかわりに、使い果たされる。
だから、同じものを食べても、その後で筋肉を使うことで(食後1時間10分のあいだに使うこと。それについてはのちほど説明する)、血糖値曲線を平坦にすることができる。
ハレドは6カ月間、昼食後と夕食後に20分のウォーキングを続けた。それから、正しい順番で食べはじめた。すると体重が約7キログラム減った。「こんなに若々しい気分は初めてだよ。同じ年齢の人と比べて、はるかにいろんなことができるし、活力があるし、幸せだと思う。友だちに訊かれるんだ、いったい何をしたんだってね......もちろんよろこんでテクニックを教えてるよ。家族のみんなもやってるんだ」
ハレドの例のように、たくさんの人が10~20分歩くことで、すばらしい結果を出している。2018年の大規模なレビュー研究によれば、135人の2型糖尿病患者が、食後に有酸素運動(ウォーキング)をすると、血糖値スパイクが3~27%減少した。
食後にジムに行けば、さらに効果的だが、満腹で激しい運動をするのがつらい人には、食後70分以内に運動すれば、血糖値スパイクを抑えられることをお伝えしたい。70分はスパイクが頂点に達するころなので、その前に筋肉を使うのが理想的だ。腕立て伏せ、スクワット、腹筋、ウエイトリフティングなどの運動でもかまわない。
抵抗運動(ウエイトリフティング)は、血糖値スパイクを30%減らし、その後24時間のスパイクの大きさを35%小さくすることがわかっている。血糖値スパイクを完全に抑えることはできないが、小さくすることはできるのだ。
また、意外な利点もある。食後に運動すると、インスリン値を上げることなく血糖値曲線を平坦にできる。まさに酢の場合と同じだ。ふだん筋肉はグルコースをとりこむのにインスリンが必要だが、筋肉が収縮しているときは、インスリンがなくてもグルコースをとりこめる。
筋肉が何度も収縮し、インスリンを使わずにとりこむグルコースが多いほど、血糖値スパイクは小さくなり、残ったグルコースを処理するためにすい臓から送られるインスリンの量も減る。これは大きなニュースだ。食後にほんの10分散歩に行くだけで、食べたものがなんであっても副作用を減らすことができる。そして長く運動するほど、血糖値曲線とインスリン曲線をもっと平坦にできるのだ。