最新記事
ヘルス

食後70分以内に散歩、筋トレ、階段の上り下り。血糖値スパイクは「食べたら動く」で防げる

2022年11月10日(木)21時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

まず、血糖値スパイクが頂点に達するときにじっとしていた場合、グルコースは細胞にあふれかえり、ミトコンドリアを圧迫する。するとフリーラジカルができ、炎症が増し、余分なグルコースが肝臓、筋肉、脂肪に貯めこまれる。

一方、グルコースが腸から血流に向かうときに筋肉を収縮させた場合、ミトコンドリアは高い焼却能力をもつようになる。ミトコンドリアはすぐ圧迫されたりせず、よろこんで余分なグルコースからATPをつくり、動いている筋肉に力を与える。次ページの持続血糖測定器のグラフを見れば、その違いは明らかだ。

glucosebook20221110-2-chart1.png

人生が変わる 血糖値コントロール大全』266ページより

こう考えることもできる。運動すると(繰りかえしになるが、10分の散歩でも役に立つ)、余分なグルコースはたまっていくかわりに、使い果たされる。

だから、同じものを食べても、その後で筋肉を使うことで(食後1時間10分のあいだに使うこと。それについてはのちほど説明する)、血糖値曲線を平坦にすることができる。

ハレドは6カ月間、昼食後と夕食後に20分のウォーキングを続けた。それから、正しい順番で食べはじめた。すると体重が約7キログラム減った。「こんなに若々しい気分は初めてだよ。同じ年齢の人と比べて、はるかにいろんなことができるし、活力があるし、幸せだと思う。友だちに訊かれるんだ、いったい何をしたんだってね......もちろんよろこんでテクニックを教えてるよ。家族のみんなもやってるんだ」

ハレドの例のように、たくさんの人が10~20分歩くことで、すばらしい結果を出している。2018年の大規模なレビュー研究によれば、135人の2型糖尿病患者が、食後に有酸素運動(ウォーキング)をすると、血糖値スパイクが3~27%減少した。

食後にジムに行けば、さらに効果的だが、満腹で激しい運動をするのがつらい人には、食後70分以内に運動すれば、血糖値スパイクを抑えられることをお伝えしたい。70分はスパイクが頂点に達するころなので、その前に筋肉を使うのが理想的だ。腕立て伏せ、スクワット、腹筋、ウエイトリフティングなどの運動でもかまわない。

抵抗運動(ウエイトリフティング)は、血糖値スパイクを30%減らし、その後24時間のスパイクの大きさを35%小さくすることがわかっている。血糖値スパイクを完全に抑えることはできないが、小さくすることはできるのだ。

また、意外な利点もある。食後に運動すると、インスリン値を上げることなく血糖値曲線を平坦にできる。まさに酢の場合と同じだ。ふだん筋肉はグルコースをとりこむのにインスリンが必要だが、筋肉が収縮しているときは、インスリンがなくてもグルコースをとりこめる。

筋肉が何度も収縮し、インスリンを使わずにとりこむグルコースが多いほど、血糖値スパイクは小さくなり、残ったグルコースを処理するためにすい臓から送られるインスリンの量も減る。これは大きなニュースだ。食後にほんの10分散歩に行くだけで、食べたものがなんであっても副作用を減らすことができる。そして長く運動するほど、血糖値曲線とインスリン曲線をもっと平坦にできるのだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪が16歳未満のSNS禁止法施行、世界初 首相「誇

ワールド

ウクライナ和平には欧州が中心的関与を、ローマ教皇 

ビジネス

ルクオイル株凍結で損失の米投資家に資産売却で返済、

ビジネス

英中銀当局者、金利見通し巡り異なる見解 来週の会合
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中