最新記事

ヘルス

あなたがダイエットに失敗するのは内臓脂肪を燃やす栄養素を制限しているから

2021年6月20日(日)20時00分
水野雅登(医師) *PRESIDENT Onlineからの転載

「脂肪の燃焼機関」も同様に、このサイクルが必要です。ところが、タンパク質不足のままでは、それができません。建物を建てたままメンテナンスをしないのと同じで、すぐにボロボロになってしまいます。

さらに、タンパク質不足のまま糖質オフの食事にスイッチすると、体はエネルギー不足に陥ってしまいます。

非常に大切なのに、とても軽くみられているために、多くの日本人がタンパク質不足です。たんぱく質を多くとって筋肉がムキムキの人達以外は、ほぼタンパク質不足と思っていいでしょう。

肪燃焼の不具合②:鉄不足

タンパク質に次いで大切なのは、「鉄」です。

「脂肪の燃焼機関」自体がタンパク質でできているのに対し、鉄は脂肪の燃焼機関で脂肪を燃やすために必須の栄養素です。

「脂肪の燃焼機関」と書いてきましたが、これは、正確には細胞内の「ミトコンドリア」のことを指しています。ミトコンドリアは、原始的な生物だった段階で細胞内に入り込み、ヒトと「共生」しているもの、とされています。細胞の中に、「ミトコンドリア」という細胞のようなものがあるというイメージから、そう考えられています。

ミトコンドリアの大きさは0.5~10μmで、1つのヒトの細胞の中に数百から数千もの数が存在しています。人間の小さな細胞1つ1つに、無数のミトコンドリアが存在しているのです。

このミトコンドリアの中で、糖質や脂肪酸、タンパク質などが代謝されて、エネルギーに変換されています。タンパク質を糖質に変える「糖新生」というはたらきも、ミトコンドリア内で行われます。

ヒトの全身の細胞の中で、ミトコンドリアが存在しないのは赤血球だけで、それ以外のすべての細胞の中に存在しています。重量でいえば、人間の体重の約10%もの重さを占めているといわれています。とても多いですね。

そして、一般にはあまり知られていないことですが、鉄不足はほとんどの女性と、メタボや生活習慣病やメンタルに問題のある男性の多くに当てはまります。

私の担当編集者たちが自らの血液を医療機関で調べたところ、全員に鉄不足があることが判明しました。とくに女性については、鉄不足ではない人を探すほうが難しいといえます。

それほど、日本は鉄に関しては異常事態になっています。そして、そのことについてまだまだ知らない人が多く、鉄不足と気づかないまま、さまざまな症状に悩まされているのです。

日本人が鉄不足になる「日本固有の事情」

詳しくは拙著" target="_blank">『1年で14キロ痩せた医師が教える 医学的に内臓脂肪を落とす方法』にもあたっていただきたいのですが、日本でこれほど多くの人が鉄不足になっているのは、次のような「日本固有の事情」が関係しています。

①食物に鉄を添加していない

欧米では、小麦粉に鉄の添加が義務付けられているのをご存じでしょうか。多くの国で国策として食品への鉄の添加が義務付けられています。しかし日本では、行われていません。これが日本人の鉄不足の一因となっています。

②医療機関でも「異常なし」と判断される

鉄不足が進行すると、頭痛をはじめとする各種の症状が出てくる人が少なくありません。症状が強くなると医療機関を受診しますが、各種検査をしても「異常なし」の診断になることが多いのです。

なぜか。医療機関で採血検査をした際の鉄(とくに貯蔵鉄=フェリチン)の基準値が、日本はアメリカの半分で、そのため実際には鉄不足であり、症状が出ているにもかかわらず日本では「異常なし」と判断されてしまうケースが多いのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ紛争は26年に終結、ロシア人の過半数が想

ワールド

米大使召喚は中ロの影響力拡大許す、民主議員がトラン

ワールド

ハマスが停戦違反と非難、ネタニヤフ首相 報復表明

ビジネス

ナイキ株5%高、アップルCEOが約300万ドル相当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    【投資信託】オルカンだけでいいの? 2025年の人気ラ…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中