ノーベル文学賞受賞ハン・ガン「死者が生きている人を助けている」 ソウル市などの図書館は異例の「特別赦免」を実施
光州は一つの都市ではなく普通名詞になる
「その時期に私が思い出したりした2つの質問がある。『現在が過去を助けることができるのか?』『生きている者が死者を救うことができるのか?』。この小説をこれ以上書くことができないとほとんどあきらめた時、ある若い夜学教師の日記を読んだ。 1980年5月、軍人たちが戻ってくると予告された夜明けまで道庁のそばのYWCAに残っていて殺害されたパク·ヨンジュンは最後の夜にこのように書いた。『神様、どうして私には良心があってこんなに私を刺して痛くするのですか。私は生きたいです』」
「この小説がどちらに行くべきか雷のように分かった。二つの質問をこのように逆にひっくり返すべきだということにも気づいた。『過去が現在を助けることができるのか?』『死んだ者が生きている者を救うことができるのか?』。以後、この小説を書く間、実際に過去が現在を助けていると、死んだ者が生きている者を助けていると感じた瞬間があった」
「人間の残酷性と尊厳が極限の形で同時に存在した時、空間を光州と呼ぶ時、光州は一つの都市を指す固有名詞ではなく普通名詞になるということを私はこの本を書いている間に知った。時間と空間を渡り、私たちに戻ってくる現在形だ」
ハン・ガンは、さらに前に進むという覚悟も明らかにした。自らを「書く人」と命名した彼女は「まだ私は次の小説を完成できずにいる」と打ち明け、「とにかく私はゆっくりとでも書き続ける。今まで書いた本を後にしてもっと前に進むつもりだ。いつの間にか角を曲がってこれ以上過去の本が見えないほど、人生が許す限り最も遠く」と話した。
講演の最後にハンガンは読者に向けて次のようなメッセージを贈った。
「私が感じるその生々しい感覚を電流のように文章に吹き込もうとし、その電流が読む人々に伝わることを感じる時は驚き感動する。言語が私たちをつなぐ糸だということを実感する。その糸につながってくれるすべての方々に心から感謝の言葉を申し上げます」
図書館が「赦免措置」を実施
ノーベル賞の贈呈式が行われる10日、韓国ではハン・ガンのノーベル文学賞受賞を祝うイベントなどが開かれた。彼女が生まれ育った光州市のある全羅南道では、10日午後4時、全羅南道立美術館で道民祝賀行事を開催したほか、道立図書館では、本を借りる道民124人にバラの花を一輪ずつプレゼントした。また全南道立図書館を含む全南道75カ所の公共図書館では授賞式当日の10日から31日まで「図書延滞特別解除」が行われる。これは過去に返却遅延で貸出禁止となった人に、再度貸出を行うようにする措置だ。
ソウル市も10日にソウル図書館で「2024世界ノーベル文学祭」を開催した。午後2時から8時までわたって行われたイベントでは、俳優のユ·ソンがハン・ガンの代表小説「菜食主義者」などを朗読したほか、文学評論家のカン·ジヒ、詩人のソン·ギワン、ソウル大学独文学科教授ホン·ジンホなどがノーベル文学賞の過去、現在、未来をテーマにした講演やブックトークを行った。
また全羅南道と同様に、ソウル図書館などソウル市の公共図書館232カ所で貸出制限の赦免を行った。ソウルでは約10万人が「赦免」の恩恵を受けるとされており、対象者は11日からソウル図書館および管内の公共図書館の貸出サービスを再び正常に利用できるという。
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