最新記事
ジェンダー

アカデミー賞が「男女区分」廃止へ?...ジェンダー中立の一方で「女性に不利」との批判も

Battle of the Sexless

2024年7月26日(金)11時47分
ヘスス・メサ
オスカー像

グラミー賞に始まったジェンダー中立化はアカデミー賞にも? TIM BOYLE/GETTY IMAGES

<女優賞と男優賞の一本化を検討中のアカデミー賞。ノンバイナリーやトランスジェンダーの演者を中心に支持が集まるが、性別区分のない監督賞などでは圧倒的に男性の受賞者が多い──>

近く、アカデミー賞が大きく変わるかもしれない。この賞を主催する映画芸術科学アカデミーが主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞を、性別区分のないジェンダー中立的な賞に変更することを検討しているのだ。

音楽賞や映画賞などで性別区分の廃止が相次ぐなかで、アカデミー賞もこの流れに続こうというわけだ。ただし、映画芸術科学アカデミーのビル・クレイマーCEOは米バラエティー紙のインタビューに対して「まだ初期の検討段階」だと述べている(本誌は同アカデミーに取材に応じるよう求めている)。


このトレンドは、音楽分野でグラミー賞が2012年に、ポップス、カントリー、R&Bの最優秀パフォーマンス賞で性別区分を廃止したことをきっかけに始まった。それ以降、MTVムービー&TVアワーズ、ゴッサム賞、インディペンデント・スピリット賞なども同様の改革を行った。

映画賞や音楽賞の性別区分の廃止は、エマ・コリンやエージア・ケート・ディロンなど、ノンバイナリーのパフォーマーたちに支持されている。

この問題は、ドラマ『POSE/ポーズ』に主演したMJ・ロドリゲスがエミー賞ドラマ部門の主演女優賞にノミネートされたことをきっかけに注目されるようになった。このノミネートは、トランスジェンダーであることを公表しているパフォーマーとして初めてのことだった。

しかし、映画賞や音楽賞の性別区分を廃止することに対しては批判的な声もある。映画批評家のクリスチャン・トトや、女優のパトリシア・アークエット、ジェイミー・リー・カーティスらは、多様性を支持すると述べる一方で、賞の性別区分廃止は女性に不利に働くと主張する。

実際、アカデミー賞には既に、監督賞、脚本賞、作品賞(プロデューサーが受賞)など、性別区分のない部門がいくつかある。これらの部門の受賞者は圧倒的に男性が多い。

非営利団体「女性メディアセンター」の調べによると、07~23年の17年間にこれらの部門でアカデミー賞を受賞した人の78%が男性だ。

クレイマーは、28年のアカデミー賞創設100年に向けて、メディアを取り巻く環境の変化に対応していく意向をバラエティー紙に示した。

「アカデミーは、映画産業と、非営利の芸術・文化部門の両方にまたがって活動している。この両分野ではいずれも、ビジネスモデルの大転換を経験しつつある」と、クレイマーは述べている。

「私たちが次の100年間も繁栄し続けるためには、より多様な人々を支援しなくてはならない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア軍、150万人規模へ 大統領令で18万人増強

ワールド

フーシ派のイスラエル中部攻撃、敵へのメッセージ=ハ

ワールド

イラン大統領、対ロシア兵器供与を否定 「就任以降な

ワールド

イラン大統領、米と直接交渉可能と示唆 ミサイル計画
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優雅でドラマチックな瞬間に注目
  • 2
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰だこれは」「撤去しろ」と批判殺到してしまう
  • 3
    ウィリアムとヘンリーの間に「信頼はない」...近い将来の「和解は考えられない」と伝記作家が断言
  • 4
    地震の恩恵? 「地震が金塊を作っているかもしれない…
  • 5
    バルト三国で、急速に強まるロシアの「侵攻」への警…
  • 6
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 7
    広報戦略ミス?...霞んでしまったメーガン妃とヘンリ…
  • 8
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 9
    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…
  • 10
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 4
    アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎
  • 5
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 6
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 7
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 8
    キャサリン妃、化学療法終了も「まだ完全復帰はない…
  • 9
    33店舗が閉店、100店舗を割るヨーカドーの真相...い…
  • 10
    世界に離散、大富豪も多い...「ユダヤ」とは一体何な…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すればいいのか?【最新研究】
  • 4
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 5
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 6
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 7
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 8
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 9
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 10
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中