映画『テトリス』舞台裏──冷戦末期のソ連で開発されたゲーム、世界を魅了するまでの道のり
The Story of an Enduring Game
映画『テトリス』はそのゲームを世に出した男の物語(写真はロジャーズ役のタロン・エガートン) APPLE TV+
<時代を超えて、世界のあらゆる世代に愛され続ける秘密>
落ちてくるブロックの向きを変えて積んでいくだけ。ただそれだけのシンプルなルールなのに、なぜかやめられない人気ゲーム「テトリス」。アップルTVプラスで配信中の映画『テトリス』は、このゲームが世に出るまでの実話に基づく物語だ。
だが一時は、魔法を操る登場人物が活躍するファンタジー映画になりかけたという。「当初の企画では、ちょっと面白いマジシャンたちの物語だった」と、1984年にテトリスを開発したロシア人エンジニアのアレクシー・パジトノフ(現在はアメリカに帰化)は語る。
ジョン・S・ベアード監督による『テトリス』の主人公は、シンプルながら中毒的なテトリスの面白さに気が付いたインドネシア系オランダ人ゲームデザイナーのヘンク・ロジャーズ。映画は、ロジャーズが当時のソ連に乗り込み、テトリスを世界に紹介するまでの冒険を描く。
冷戦時代末期という時代設定もあり、ちょっとしたスパイ映画並みのハラハラした展開になっている。ロジャーズを演じるのはイギリスの人気俳優タロン・エガートン、パジトノフを演じるのは、ロシアの舞台俳優ニキータ・エフレーモフだ。ロジャーズとパジトノフは映画のエグゼクティブプロデューサーも務める。
ゲームボーイが影の主役
それがなぜ、魔法使いの映画になりそうだったのか。
パジトノフによると、当初映画化を企画したスレショルド・エンターテインメント社は、アニメ映画の製作会社で、2014年にテトリスをベースにした「壮大なSF映画」を作ると発表した。16年には3部作になる可能性も示唆した。
幸い、この企画は実現せず、『テトリス』はよくある人気ゲームをベースにした映画になる運命を逃れた。「最終的に、もっと重要で、もっと興味深い映画になったと思う」と、パジトノフは語る。
「既存のゲームを基に映画を作ったものの、すごくおかしな仕上がりになってしまったという作品は多い」と、ロジャーズは語る。「たいていはゲームをしたことがある人をターゲットにしているが、実際にファンが映画を見ると、『なんだ、私が夢中になったゲームと全然関係ないじゃないか』と落胆する」
ロジャーズは1980年代、任天堂のためにテトリスの権利を獲得するべく、当時のソ連に乗り込んだ。任天堂は89年に発売されることになる携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」のために、テトリスを手に入れたかったのだ。
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