最新記事
映画

映画『テトリス』舞台裏──冷戦末期のソ連で開発されたゲーム、世界を魅了するまでの道のり

The Story of an Enduring Game

2023年4月28日(金)16時50分
ジェイミー・バートン
映画『テトリス』はそのゲームを世に出した男の物語

映画『テトリス』はそのゲームを世に出した男の物語(写真はロジャーズ役のタロン・エガートン) APPLE TV+

<時代を超えて、世界のあらゆる世代に愛され続ける秘密>

落ちてくるブロックの向きを変えて積んでいくだけ。ただそれだけのシンプルなルールなのに、なぜかやめられない人気ゲーム「テトリス」。アップルTVプラスで配信中の映画『テトリス』は、このゲームが世に出るまでの実話に基づく物語だ。

【動画】映画『テトリス』予告編

だが一時は、魔法を操る登場人物が活躍するファンタジー映画になりかけたという。「当初の企画では、ちょっと面白いマジシャンたちの物語だった」と、1984年にテトリスを開発したロシア人エンジニアのアレクシー・パジトノフ(現在はアメリカに帰化)は語る。

ジョン・S・ベアード監督による『テトリス』の主人公は、シンプルながら中毒的なテトリスの面白さに気が付いたインドネシア系オランダ人ゲームデザイナーのヘンク・ロジャーズ。映画は、ロジャーズが当時のソ連に乗り込み、テトリスを世界に紹介するまでの冒険を描く。

冷戦時代末期という時代設定もあり、ちょっとしたスパイ映画並みのハラハラした展開になっている。ロジャーズを演じるのはイギリスの人気俳優タロン・エガートン、パジトノフを演じるのは、ロシアの舞台俳優ニキータ・エフレーモフだ。ロジャーズとパジトノフは映画のエグゼクティブプロデューサーも務める。

ゲームボーイが影の主役

それがなぜ、魔法使いの映画になりそうだったのか。

パジトノフによると、当初映画化を企画したスレショルド・エンターテインメント社は、アニメ映画の製作会社で、2014年にテトリスをベースにした「壮大なSF映画」を作ると発表した。16年には3部作になる可能性も示唆した。

幸い、この企画は実現せず、『テトリス』はよくある人気ゲームをベースにした映画になる運命を逃れた。「最終的に、もっと重要で、もっと興味深い映画になったと思う」と、パジトノフは語る。

「既存のゲームを基に映画を作ったものの、すごくおかしな仕上がりになってしまったという作品は多い」と、ロジャーズは語る。「たいていはゲームをしたことがある人をターゲットにしているが、実際にファンが映画を見ると、『なんだ、私が夢中になったゲームと全然関係ないじゃないか』と落胆する」

ロジャーズは1980年代、任天堂のためにテトリスの権利を獲得するべく、当時のソ連に乗り込んだ。任天堂は89年に発売されることになる携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」のために、テトリスを手に入れたかったのだ。

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ガザの砂地から救助隊15人の遺体回収、国連がイスラ

ワールド

トランプ氏、北朝鮮の金総書記と「コミュニケーション

ビジネス

現代自、米ディーラーに値上げの可能性を通告 トラン

ビジネス

FRB当局者、金利巡り慎重姿勢 関税措置で物価上振
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中