脳を健康にするという「地中海食」は本当に効果があるか
地中海食が軽度認知障害の人たちにも有効かどうかを、コロンビア大学のニコラオス・スカルメア、ヤコブ・スターンらがテストしている。軽度認知障害は、認知力が健常なまま年を取った人たちと、アルツハイマー病やほかのタイプの認知症になってしまった人たちの間の過渡的段階に位置している。ちなみに、軽度認知障害を患っている人のうち、ある人は認知症になるが、最終的にそうならない人もいる。
健常な認知力を持つ人1393人(この研究中に275人が軽度認知障害になった)、軽度認知障害の人482人(この研究中に106人がアルツハイマー病になった)が参加し、研究はおよそ5年間続いた。その結果、健常な認知力を持つ人が地中海食に忠実に従うと、軽度認知障害になるリスクが低下し、軽度認知障害の人が地中海食に忠実に従った場合も、軽度認知障害からアルツハイマー病へと悪化するリスクが低下することがわかった。
なぜこのようなことが起こるのか? 地中海食は、コレステロール値、血糖値、血管の状態を総合的に改善し、抗酸化物質が多い食材を使うので炎症を減らす。そのため、軽度認知障害や認知症に進展するリスクを低下させるメカニズムがあると考えられている。
健康的な脳を維持するために、地中海近辺に引っ越したほうがよいのだろうか? その必要はない。世界中どこにいても地中海食を実践することはできるし、地中海食をマンハッタン北部のコミュニティといった、あきらかに地中海から離れた地域で実践した場合でも効果があることが確認されているからである。
※抜粋第2回:記憶力や認知力をアップさせるサプリメントは存在するか はこちら