株式市場にもブーム到来、サブスク銘柄は本当に儲かるのか?
■収益安定業種から勝者を見極めるポイント
では、サブスクを含め、収益が安定している業態ならばどんな企業でも株価は上がりやすいのかというと、もちろんそうではない。
足元でサブスク企業が堅調な値動きを見せている背景には、ビジネスモデルに安定性があるほか、成長テーマとして顧客数が大きく拡大していることも関係している。市場規模が急拡大しているということだ。「安定感+成長性」という構図により、株価が上昇しやすくなっているのである。
ただ、成長市場なだけに、業界内での競争は厳しい。機能としては似たようなサービスであるものの、細部の品質の違いで勝者と敗者が決まるような競争が展開されている。また、継続的なサービスという性質上、顧客を競合他社から奪うことも容易ではない。
これにより、勝者は安定的・継続的に多額の収益を上げられる一方、敗者は低収益のまま、悪い意味で安定的に事業を続けることになる。
すなわち、単に「収益安定業種だから」という理由だけでは買い材料とはなり得ず、「市場は拡大しているか?」「業界内で競争に勝っているか?」の2点を見定めようとする姿勢が重要となってくる。
市場の拡大については、例えば電気・ガスの市場規模は横ばいのため、それら企業への投資で高いリターンを得るのは難しいかもしれない。また競争については、例えば月次契約数などのIR情報を見比べて、競争環境においてどのようなポジションにいるのかをチェックすることも有効だろう。
そのサブスク銘柄は本当に安定的か?
一顧客当たりから得る収益が安定的・継続的なサブスク。確かにそれは、投資家にとっては業績予想の組み立てにおいてプラスに働くものの、足元では厳しい競争が繰り広げられ、多くのサブスク企業は広告宣伝費を投下することでまずは売上高を伸ばす(顧客数を増やす)という戦略を採っている。
つまり、ビジネスモデル自体には本質的に安定性・継続性があるものの、市場環境・事業環境を背景にそうした戦略が採られた結果、会社全体の収益で見れば安定性がない、というケースも少なくない。
具体的には、広告宣伝費が利益を押し下げる一方、顧客数が増えて売上高は不安定的に伸びるという事態も、実際に多く起こっている。サブスク関連銘柄を見るうえでは、このような状況を理解し、通常以上に市場規模の推移や競争状況の確認に気を配らなければならないと考える。
いずれにしても、〝何となく〟の空気感で買っているのだとすれば、いま一度、サブスク銘柄について見直してみたほうがいいかもしれない。
(参考記事)水素関連株は買い? 投資テーマとしての可能性と注意点を考える
※本記事は再掲載です(初出:2020年7月15日)
[執筆者]
石津大希(いしづ・だいき)
外資系投資顧問会社で株式アナリストとして勤務したのち独立。ファンダメンタルズ分析の経験を生かして、客観的データや事実に基づく内容を積極的に発信。市場で注目度の高いトピックを取り上げ、深く、そして、わかりやすく説明することを心がける。