最新記事

教育

性教育は妊娠・避妊だけじゃない。「性犯罪から身を守る方法」何歳からどうやって教える?

2021年8月10日(火)16時10分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

kidsandsexbook20210810-2.png

『子どもと性の話、はじめませんか?』111ページより

しかし、「あやしい人に気をつけて」と言われても、子どもはどう気をつければいいのか分からない。具体的に教えることが大切だという。

例えば、プライベートゾーン(性的に関係のある自分だけの体の大切な場所。具体的には胸やお尻、性器、唇)を誰かに「見せて」「さわらせて」と言われたり、誰かが見せよう、さわらせようとしてきたりしたら、「いやだ! やめて」と言って逃げるように伝える。

ひとりでいるときに「あっちで一緒に遊ぼう」「車に乗らない?」と誘われたら、「お父さんとお母さんがダメだと言ってるから」と答える。このときに、主語をお父さん、お母さんにすることで、子どもが迷いや罪悪感を抱かずに断れるという。

誘い文句は相手によって異なる。宮原氏は、いろいろなシーンを想定して、子どもとシミュレーションをしておくことを勧める。

リベンジポルノ被害の多くは「自撮り写真」

思春期(小学校高学年~高校生ごろ)に気をつけたいのが、スマホをきっかけとしたトラブルだ。2020年にSNSで性犯罪の被害者となった18歳未満の子どもは1819人。スマホのフィルタリング機能だけでは防ぎきれない。

宮原氏は、家庭でネットリテラシーについて話しながら、スマホルールを考えることの大切さを訴える。

子どもの中には、「みんなもやっているから」とSNSで自分の性的な画像や動画をシェアしてしまうケースもある。元交際相手によってその画像をインターネットにアップされてしまうリベンジポルノ被害の大半は、自撮りした写真なのだ。

さらに、18歳未満の性的な画像や動画は「児童ポルノ」にあたる。性的な写真を子どもに送らせたり、インターネットに掲載したり、他の人に転送したりすると法律違反になる。送った側が処罰の対象になることもあるので、注意が必要だ。

ただし、心配がゆえに子どものスマホを勝手に見ることに、宮原氏は注意を促す。もし子どもがトラブルを抱えていることをそれで知っても、子どもに言いづらくなってしまうからだ。

さらに、子どもの信頼を失ってしまうことにもなりかねない。子どもが困ったときに相談してもらえるような関係性をつくることが、何より大切だ。

実際に「命育」には、「息子が女の子に裸の写真を送ってほしいとLINEをしていた」「女の子同士で下着の写真を送り合っていた」などの悩みが寄せられているという。

まずは、子どもがどの程度ネットリテラシーを身につけているかをチェックしてみよう。そして、軽い気持ちで送った写真がネットで拡散される可能性があるなど、写真を共有する危険性を伝えるのだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

インド製造業PMI、3月は8カ月ぶり高水準 新規受

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

ユニクロ、3月国内既存店売上高は前年比1.5%減 

ビジネス

日経平均は続伸、米相互関税の詳細公表を控え模様眺め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中