性教育は妊娠・避妊だけじゃない。「性犯罪から身を守る方法」何歳からどうやって教える?
tzahiV-iStock.
<家庭で性の知識を身につけることが必要だと、性教育サイト「命育」代表の宮原由紀氏。子どもたちはネットを性の教科書にしてしまっているし、性教育は防犯にもつながるからだ。年齢ごとに必要な知識と伝え方とは?>
「性教育を学校に丸投げしてはいけない」と、性教育サイト「命育」を主宰する宮原由紀氏は言う。
「学習指導要領」(平成29・30年改訂)によると、学校で教える性教育は、小学校4年生で思春期の体の変化を学び、5年生では男女に分かれて、体の悩みや生理用品など、より丁寧な指導を行うというもの。
学校は性教育にそれほど時間を割いていないのが現状だ。
宮原氏によると、子どもたちがより詳しい性の知識を得る場所は、インターネットのアダルトコンテンツだという。
高校生のセックスの情報源は、「友人・先輩」「インターネット」が多い。その友人や先輩もインターネットを参考にしていると考えると、それが子どもたちの性知識の教科書だと言っても過言ではない。
そんな学校教育の現場でも、最近は子どもを狙う性犯罪やSNSに起因する性犯罪に対する防犯意識が高まっている。性教育が変わりつつあるのだ。
しかし宮原氏は、セックスや避妊などの知識を学校で教えられるようになるには、まだまだ時間がかかるだろうと考えている。
一方で、セックスや妊娠、避妊を教えることだけが性教育ではないとも宮原氏は言う。身を守るために、「他人が許可なく自分の体にさわるのはいけない」と教えることも性教育であり、さわられたときに「おかしい」と子どもが気づけることも大切な知識である。
それらは防犯意識に留まらず、自分や他人を大切にすることにもつながる。できるだけ小さい頃から、家庭で、性の知識を身につけることが必要なのだ。
そうは言っても、親子間で性の話は気まずいというのが正直なところだろう。
2018年、宮原氏は、そんな親たちの「困った」をヒントに「命育」(https://meiiku.com/)を立ち上げた。医師や専門家の協力のもと、性教育に関する保護者の質問に答えるだけでなく、性に関する悩みを抱える子どもにも寄り添ってくれるウェブサイトだ。
このたび、産婦人科医・高橋幸子氏の監修のもと『子どもと性の話、はじめませんか?――からだ・性・防犯・ネットリテラシーの「伝え方」』(CCCメディアハウス)を出版した宮原氏。本書では、幼児期から思春期まで、その年齢ごとに必要な性の知識や伝え方を知ることができる。
「あやしい人に気をつけて」では子どもは分からない
本書で児童期(小学校低学年~中学年ごろ)の子どもに教えておきたい知識のひとつとして挙げられているのが、性犯罪から身を守る方法だ。この時期は、放課後に友達の家や公園に行くなど、ひとり行動が増える。
「命育」に参画している精神保健福祉士の斉藤章佳氏によると、ペドフィリア(小児性愛障害)の多くはごく平凡な人だという。
お世話になっている人など、顔見知りの可能性も高い。さらに性被害は、女の子に限らない。男の子も注意が必要だ。