ファスティング(断食)の利点は「体重が減る」だけじゃない
ファスティングとがん
がんは世界で2番目に多い死因で、毎年およそ1000万人が亡くなっている。6人にひとりががんで亡くなるといわれている。多くの場合、がんになる要因としては、遺伝、有害物質への曝露(ばくろ)、ウイルスなどが挙げられるが、原因が不明な場合もある。
そうした不運な場合には、がんの発症を予測することは難しい。でも、これまで避けようがないと思われてきたがんも、ファスティングをすればある程度予防できる可能性がある、という心強い研究がある。
その鍵となるのは、2型糖尿病や肥満とも関わりのある、インスリンだ。乳がん細胞を組織から採取して、実験室で増殖させることはとても簡単だ。グルコース、上皮成長因子、インスリンを加えれば、がん細胞はあっという間に増殖する。ところが、インスリンを取り除くと、乳がん細胞は死ぬ。
もう一度言おう。乳がん細胞はインスリンが多いと増殖し、インスリンがないと死ぬ。では、インスリン値を下げるにはどうしたらいいだろう? ファスティングだ。
がんと関わりのあるふたつ目の要素であり、もとに戻すことが可能なものは、肥満だ。
2003年にアメリカがん協会が、アメリカ人の男女90万人を対象に行った研究の結果を発表した。1982年から1998年まで、被験者は数年ごとに追跡調査され、死亡した人とその死因が調べられた。その際、BMIも調べられた。研究が始まったときは、がんを発症していた人は誰もいなかったのに、16年後、およそ5万7000人ががんで亡くなっていた。
驚くのは、BMIが40超の人の場合、がん全般による死亡率が男性で52%、女性で62%高かったということだ。BMIは食道がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、胆囊がん、膵臓がん、腎臓がん、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、胃がん、前立腺がん、子し宮きゅう頸けいがん、子宮体がん、卵巣がんによる死亡と関連があることは明らかだった。
研究者は、がんによって死亡した男性のうち14%、女性の場合は20%が、太りすぎや肥満が原因だったと結論づけた。肥満はがんの大きなリスク因子であることは明らかだ。では、どうしたら体重を減らすことができるだろう? ファスティングだ。
さらに、オートファジーはがんの成長スピードを遅くしたり、がんになるのを防いだりすることもわかった。この発見は科学者にとって衝撃だった。それまでオートファジーは、がんの成長スピードを速めると考えられていたからだ。
2019年にネイチャー誌に掲載された研究結果では、オートファジーはがんになる細胞を殺すのにおおいに役立つとされた。オートファジーが働かなくなると、こうした有害な細胞が自己複製し、がんを成長させてしまう。では、オートファジーを働かせるには何をしたらいいだろう? ファスティングだ。
『トロント最高の医師が教える 世界最強のファスティング』
ジェイソン・ファン、イヴ・メイヤー、メーガン・ラモス 著
多賀谷正子 訳
CCCメディアハウス
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