最新記事

ファスティング

カロリー制限ダイエットが成功する確率は、約1%しかない

2021年3月17日(水)19時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

こうした患者に投薬治療やそのほかの技術的な治療を行っても、病状がよくなることがないのは明らかだった。私は次第に、投薬や透析などの治療を行ったところで、この疾患の根本原因に対処しないかぎり、病状が大きく改善することは望めないのではないかと思うようになっていった。

体重が多すぎると2型糖尿病を発症する。ということは、太りすぎていることが腎臓病の根本原因であることは明らかだ。だとすると、唯一の論理的な解決策は、患者が減量するのを手助けすることだ。

でも、どうしたら効果的に減量でき、それを長期間維持できるだろうか。減量の目標を最もうまく達成できて、健康になれる方法はなんだろう。

何十年ものあいだ、医師が述べてきた一般的なアドバイスは「食べる量を減らして運動量を増やそう」というものだった。けれども、ほとんどの人には効果がなかったし、数多くの科学的な研究でも(これから本書で述べていく)、カロリー制限が有効ではないことが証明されてきた。

私を含めた誰もが、カロリー制限ダイエットに挑戦して失敗した経験があるはずだ。2キロだけやせたいという人も、93キロやせたいという人も、みな同じだ。

あいにく、私はメディカルスクールで栄養のことや減量については、ほとんど学んでこなかった。そこで、そのふたつを理解するという仕事を自分に課すことにした。私の患者の健康を左右する最も大切な要素は、まず間違いなく体重といっていい。だから、この点に関するエキスパートにならなければいけないと思った。

でも、新しいことを学ぶよりも、自分の頭に染みついた間違ったパラダイムを消し去ることのほうがずっと難しい。自分が知っていると思い込んでいた――メディカルスクールで学んだ――減量についての知識のほとんどが、いまでは完全に間違いであることが証明されている。

カロリー制限がその一例だ。メディカルスクールでは、体重を落とすには消費するカロリーよりも少ないカロリーの食事をすればいいだけだと教わった。「摂取カロリーを消費カロリーより少なくすれば太らない」という論理だ。

だが、この方法で体重を減らすことはできないし、そう述べているのは私だけではない。カロリー制限法が成功する確率は、ざっくり言って1%ほど。私たちはいままでにないほどカロリーに気をつかっているというのに、肥満はいまや世界的な問題になってしまった。

減量が健康にとって、とくに腎臓疾患にとって大切であることから、私はカロリー制限法を科学的な側面から検証した。すると驚いたことに、カロリー制限法には、科学的に見た利点はいっさいないことがわかったのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米英欧など18カ国、ハマスに人質解放要求 ハマスは

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

米新規失業保険申請5000件減の20.7万件 予想

ビジネス

ECB、インフレ抑制以外の目標設定を 仏大統領 責
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中