うつ病と燃え尽き症候群はまったく違うのに、見当違いな治療が蔓延している
従来の(そして現在でも多く行われている)治療では、そうした本当の原因を突き止めようとせず、ただ症状だけを抑え込もうとする。だが、それでは家が火事になって燃えているときに、煙探知機の警報音だけをオフにするようなものだと著者は指摘する。
あなたは悲観主義か完璧主義か――うつと燃え尽き症候群の違い
著者によれば、うつ症状でカウンセリングに来る人は、2つのグループに分けられる。一方は、うつ病の人。もう一方は、燃え尽き症候群を経てうつになった人だ。この違いを見ずに薬だけを処方する医師もいるが、著者曰く、これは早期回復の極めて重要な手がかりだ。
いきなりうつになる人と、燃え尽き症候群からうつになる人とでは、考え方がまったく違うという。前者は、根拠のない悲観的な考え方を意図的にする傾向にあり、後者は、どちらかと言えば完璧主義。なかには、これら2つの要素を同じくらい持つ人もいる。
意図的な悲観主義になってしまうのは、過去の経験から前向きな考え方ができないからだ。ある期間は仕方がないとしても、それが長く続くと、脳はネガティブな思考ばかりが得意になり、ポジティブに考える力が低下してしまう。脳の構造から変わってしまうのだ。
一方、完璧主義者はいつも「時間が足りない」と感じている。そうやって自分を追い込んだ結果、やがて燃え尽きる。だから、そこからうつに移行することには、実は重要な役割がある。このうつは、言ってみれば、心身を強制的に休ませるための「緊急停止スイッチ」なのだ。
うつ病には、このように燃え尽き症候群の結果として起きるものが多いと著者は説明する。燃え尽き症候群には抗うつ薬は効果がないどころか、むしろ回復を遅らせる。重要なのは、そうなってしまった原因を知ることであり、多くの場合、それは「思い違い」なのだという。
ただし、燃え尽きてうつになる→うつの間に回復→また燃え尽きてうつになる......というサイクルを繰り返すと、双極性障害(いわゆる躁うつ病)になる。ダヴィンチ、ナポレオン、チャーチル、リンカーンなど、この障害を持っていたとされる偉人は多い。
近年うつ病が増加している要因は「抗うつ薬」にある?
うつ病や燃え尽き症候群の原因は多岐にわたっており、精神的なものだけでなく、身体の不調から来ている場合や、何らかの栄養素や薬、アルコールが影響していることもある。本書では、それぞれの原因に合わせて、そこから抜け出すためのヒントが紹介されている。