時間を守れないのは性格のせいではなく、脳を仕向ける「技術」を知らないだけ
時間把握能力を高め、時間を守れる脳になる2つの方法
菅原氏は本書で、時間を守れない脳から守れる脳になるように、脳の働きを変える方法を2つ挙げている。
まずは、時間を把握する力を鍛える方法だ。脳の中では、自分が活用している能力に優先的にエネルギーが回されるようになっている。頻繁に使う回路には、頻繁に電気信号が通っていて反応が速く、神経自体も太い。
時間管理が苦手な人は、時間を感知する神経の反応が鈍いのだ。これが時間管理の能力の差として出てくる。そこで、時間を把握する神経活動を積極的に使い、太い回路を作っていくことが大切になるという。
例えば、マルチタスクを避け、一度に行う仕事や作業を1つだけに絞る方法がある。
脳は1つの課題だけを与えられ、エネルギーに余裕ができると過去の作業と現在の作業を比較して、現在の作業時間を把握する。この無意識かつ自動的に時間を把握する脳の働きを邪魔しないことが、時間把握能力を向上するコツになる。
2つ目は、別の能力を使って時間把握能力を代行する方法だ。
脳の中では「時間把握」と「空間把握」の2つの能力がエネルギーを取り合っていると考えられている。脳の中で担う部分が共通しているので、資源の奪い合いが起こるのだ。
しかし、脳には可塑性があり、苦手な能力は得意な能力で代行することができる。その代行ルートが開拓できて、頻繁に使われるようになるとその神経はどんどん敏感に太くなっていく。その原理により、空間把握能力で時間把握能力を高めることができるのだ。
先延ばし行動が、脳を疲れさせてしまう理由
本書によれば、普段何気なくやっている些細な先延ばし行動は、脳を疲れさせる。
やるべきことを覚えて、一旦別の作業をしたのちに、適切なタイミングで思い出すのが展望記憶だ。そのやるべきことを再開するまでの間隔が長ければ長いほど、思考の切り替えが難しくなるという。情報にアクセスする神経活動を維持するには、たくさんのエネルギーが必要になるのだ。
ついつい、受け取ったメールを後で返信しようと手を付けなかったり、公共料金の請求書の振り込み期限を確認してそのままにしておくなどの行動をしていないだろうか。それが展望記憶課題を増やし、脳を疲れさせる原因になっていると、菅原氏は言う。
タイミングよく予定を思い出して時間通りに行動するには、先延ばし行動を避け、無駄に展望記憶課題をつくらないことが大切だ。
とはいえ、分かっていても、やる気が起きないという人もいるだろう。そんな先延ばしを防ぐために、本書ではすぐに体が動く3つの方法が紹介されている。