最新記事

トレーニング

ジムや器具はもう必要ない 「自重筋トレには最高の時代」と囚人コーチ語る

2020年3月25日(水)11時15分
ニック・コリアス

写真はイメージです。 vuk8691-iStock.

<アスリートが驚き、体を痛めた者も強くなり、若者たちはジムから「集団移動」している――それが自重力トレーニング(キャリステニクス)の世界。話題の『プリズナートレーニング』著者が応じた貴重なインタビュー(後編)>

※インタビュー前編:「囚人コーチが教える最強の部屋トレ 自重力トレーニングの驚くべき効果とは?」より続く

――実際にプログレッシブ・キャリステニクス(漸進的に負荷を上げていくキャリステニクス)をやったアスリートたちは、どんな点に驚き、興味を持ちますか?
conditioningbook20200325-cover200.jpg
アスリートたちが一様に驚くのは、自重力トレーニング(自分の体重だけを使って行う筋力トレーニング)が関節に及ぼす影響だ。これに勝るものはない。自重力トレーニングを正しく行えば、関節を磨耗させる代わりに強くする。

なぜか? 私たちの体が、それ自体を動かすことを意図してつくられているからだ。文字通り、体重を使って押したり引いたり、しゃがんだりジャンプすることで、私たちの体は進化してきた。その意図に従えば、筋力同様、関節も強くなっていく。

すべてのボディビルダーが自重力トレーニングをプログラムに加えるべき理由がここにある。関節を強く保てるからだ。

私は、ウエイトなどの外部荷重を扱う前に、体重の扱い方をマスターすべきだという信仰を持っている。自分の体重を相手に正しくスクワットできないのに、重いバーベルを担いでどう正しくスクワットするというのか? でかい鉄を担いでスクワットする前に、体重を相手に、スクワットという動作に関わってくる神経系、腱、深部組織を慣らしておく必要がある。

そうすればケガも少なくなる。誰でも分かる話だろ?

歴史上、伝説になっているボディビルダーやリフターは、ウエイトを挙げる一方で自重力ワークもやっていた。60年代まではそれが常識だったのだ。

最近の若いやつらは、鉄を山のように積み上げて、レッグプレスをごく少ない回数やっている。一方で、ワンレッグ・スクワットを1レップすらできない。それでいて、なぜ、いつも膝を傷めているのかと不思議がっている。

condioningbook20200325-2-2.jpg
condioningbook20200325-2-3.jpg

ワンレッグ・スクワット(『プリズナートレーニング』133ページ)

若いやつらは、地面すれすれまで体を降ろすプッシュアップ20レップスができない。一方で、鉄をどんどん加えてベンチプレスをやっている。10レップスのプルアップができないボディビルダーが、かがんでバーベルロウに勤しみ、背中や腰を壊してしまっている。

ボディビルダーが痛みに苦しんでいるのは偶然ではない。いきなり「重い」世界へ飛び込むからそうなるのだ。その道を行く必要はない。

「ジムで、膝(あるいは、背中、肩、手首)をダメにしたので、二度とトレーニングできないと思っていた」という内容のメールや手紙がいつも私のところに送られてくる。

プログレッシブ・キャリステニクスを6カ月間やれば、これらの「絶望的な者たち」も虎のようにしなやかな体に変わる。関節の痛みと関節炎が改善し、以前よりも強く大きくなっていく。ボーナスとして体脂肪が減ってくる。この変化に驚かない人はいないだろう。

ウエイトトレーニングを非難しているわけでも馬鹿にしているわけでもない。プログレッシブ・キャリステニクス検定(Progressive Calisthenics Certification、PCC)のインストラクターの中には、ウエイトを使う者が少なからずいるし、ウエイトを使ってクライアントにトレーニングを施す者もいる。

プログレッシブ・キャリステニクスは、特にボディビルダーにとって信じられないほど価値があるものだが、それでいて、まったく知られていないツールだ。私はPCCブログを通して、プログラムにキャリステニクスを加えるようボディビルダーたちに呼びかけたことがある。

【参考記事】全否定の「囚人筋トレ」が普通の自重筋トレと違う3つの理由

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

英中銀ピル氏、QEの国債保有「非常に低い水準」まで

ワールド

クラウドフレアで障害、数千人に影響 チャットGPT

ワールド

イスラエル首相、ガザからのハマス排除を呼びかけ 国

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中