ウォーキング・セラピーは「どこでもいい」「ただ歩けばいい」わけではない
自然の中を歩かなければウォーキング・セラピーの効果を得られないわけではありませんが、可能な限り、緑の多いエリアを探すことは重要です。たとえば、通勤の一部を徒歩に変えてはどうでしょう。1時間早く家を出れば、ウォーキングをしても始業時間までに職場に到着できます。仕事を終えた後に公園や森、川沿いの道を選んで徒歩で帰宅するのもいいでしょう。住んでいる地域の地図を広げ、緑の多いエリアや散歩にちょうどいい道を探してみましょう。
(中略)
歩き方
「歩き方」と言われても、一方の足をもう片方の足の前に出す動きを繰り返すだけ......と思っていませんか。それは誤解です。
皆さんは、ウォーキング・セラピーという冒険に初めて挑もうとしています。つまり、不安や気分の落ち込み、ストレスなどと向き合う道を選んだわけですが、そうした内面の現状は往々にして、動きが遅い、視線が下がる、肩を落としているなどの形で外見にも表れています。
重荷を背負っているような感覚は、すぐには消えないでしょう。それでも、「荷物」を軽くするためにできることはあります。頭を下げて歩く代わりに、姿勢を意識してまっすぐに立ち、目的と自信を持って歩いてみましょう。
「自信のあるふり」でも構いませんから、まずは5〜10分試してみること。「ふり」であっても、6章で解説する「ピグマリオン効果」が期待できますが、今の段階では、自信を持って歩くことには意味がある、とだけ覚えておいてください。
しっかりした姿勢で歩いているときには、脳から体に「思い切って力強く動け」と指令が送られています。また、思い切り体を動かせるようになると、それが自己肯定感を醸成し、さらなる自信を生み出します。一つ一つの動きが神経ネットワークに影響を与えますから、この訓練は、ウォーキングに前向きに取り組むための効果的なエクササイズとなります。
ネガティブなエネルギーをポジティブなものに変換できる点も、この訓練の効能です。それも一時的ではなく、長期的に。前向きなエネルギーが積み重なると徐々に、意思決定の際に自信を持って決断できるようになり、不安や先送りを減らすことにもなります。
※抜粋第1回:欧米で注目を集める「歩くだけ」心理療法、ウォーキング・セラピーとは何か
※抜粋第2回:ウォーキングは、脳を活性化させ、ストレスを低下させ、つながりを感じさせる
『ウォーキング・セラピー
ストレス・不安・うつ・悪習慣を自分で断ち切る』
ジョナサン・ホーバン 著
井口景子 訳
CCCメディアハウス
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