名門MBAケロッグの名物教授、初めてのプレゼンは「ニワトリの洗い方」だった
ニワトリを育てた経験のある人なら、正しい体のつかみ方があることを知っているだろう。羽の上から両手で押さえて、やさしく持ち上げる。こうすると、ニワトリは羽ばたけないことをすぐに悟り、暴れるのをやめておとなしくなる。そうなれば、向きを変えながらニワトリの体を調べることができる。この場合で言えば、体を洗えるようになるわけだ。
それ以外の形でニワトリの体をつかむのは、すべて間違いになる。脚や尾、あるいは片方の羽だけをつかんだりすれば、散々なことになってしまう。とにかく両方の羽を押さえないといけない。ニワトリは身の危険を感じ、羽をばたつかせて逃げようとするからだ。特に白色レグホン種は驚いて暴れやすい。
私は箱の中に手を伸ばしながら、プレゼンのことが少し心配になり、流れを立て直そうとした。プレゼンの時間は数分で、審査員が時計を見ていた。私は手を伸ばしてニワトリの白い尾をつかみ、箱から引っ張り出した。そして......騒動が始まった。
ニワトリは絞められるのだと思って羽をばたつかせ、私の顔や胸をくちばしでつついてきた。ほこりと土が舞い、白い羽根が辺り一面に飛び散った。私は片手で尾をつかんだまま、取り逃がすまいと必死だった。観客席の人たちは、一体どうなるのかと身を乗り出していた。私は暴れるニワトリを片手でつかんだまま、冷静にプレゼンを続けようとした。
「ニワトリの体をしっかり押さえるようにすることがとても大事です。そうしないとパニックを起こして羽をばたつかせます。このニワトリのようにです」
白い羽根が舞い飛び、ニワトリが大声で鳴くなかで、私は話を続けた。
「ニワトリが落ち着くまでに時間がかかることもあります」
ニワトリ相手の悪戦苦闘は、まるで何時間も続いたように思えた。責め苦のようだった。しかし、そのうちにようやくニワトリも疲れ果て、私は両手で羽を押さえてつかむことができた。私は安心して、こう続けた。
「ニワトリをおとなしくさせれば、あとは流しに入れるだけです」。私は石鹼水の入ったバケツにニワトリを入れた。「刺激の少ない石鹼を使うのを忘れないようにしてください」
すると、ニワトリはチャンスを悟り、また逃げ出そうとした。私の片手が滑って外れ、ニワトリは羽をばたつかせた。そして、またドタバタ。今度は水が飛び散り、私はびしょ濡れになってしまった。最終的に、私はなんとかニワトリを押さえて体を洗い、母のヘアドライヤーを使って体を乾かした。
「体をしっかり乾かすことが大事ですが、ドライヤーの使い方に気をつけてください。熱くなりすぎてしまうことがあります。中温がベストです」