名門MBAケロッグの名物教授、初めてのプレゼンは「ニワトリの洗い方」だった
そして、しっかりと両手で羽を押さえながら、ニワトリを箱の中に戻した。「以上がニワトリの洗い方です」と、私はまとめに入った。
「3つの要点を覚えておいてください。ニワトリの体をしっかり押さえること、刺激の少ない石鹼を使うこと、しっかりと体を乾かすことです。実際には、とても簡単なことです」
私はもうくたくたで、濡れた体のあちこちにニワトリの羽根がくっついていた。それでも、プレゼンをやり遂げたことで高揚していた。私が道具をまとめている間、聞いていた人たちは熱い拍手を送ってくれた。その日のプレゼンのなかで、最も盛り上がった一つであることは間違いなかった。私は自分の席に戻り、あとの人たちのプレゼンを見た。
その日の表彰式で、私は青いリボンをもらった。得点はトップだった。審査員の人たちは、論評で私のプレゼンをとても褒めてくれた。特にニワトリを使った実演が評価された。
この日、私は3つの重要なことを学んだ。
第一に、プレゼンにはスリルがあるということ。怖さと興奮、心と体の高揚が混然一体となる。自分が一身に注目を浴びるのだ。
第二に、いくつかのシンプルなルールに従うことが役立つということ。最初の説明、最後のまとめ、はっきりしたストーリー、シンプルなビジュアルが本当に役立つ。プレゼンの基本に、それほど複雑な部分はない。
そして第三に、上手なプレゼンによって、どんなことでも面白くして、相手の関心を引きつけられるということ。関心を引きたければ、動きのある要素が常に物を言う。たとえば、羽をばたつかせて鳴き叫ぶニワトリのように。居眠りしていた人も確実に目を覚ます。
こうした少年時代の体験談を綴った本書で、カルキンス教授は相手(聞き手)の見定め方からストーリー・構成、データの使い方、そもそもプレゼンをする必要があるのか否かということまで、プレゼンを成功させるためのコツを詳しく解説していく。
カルキンス教授によれば、「プレゼンに秘訣などない。必要なスキルはシンプルで、成功へのカギもはっきりしている。問題点は簡単に特定、修正ができる」とのこと。実績に裏打ちされた説得力がそこにはある。
彼はこう書く。
「世界一のアイデアをもっていても、それをうまく示すことができなければ理解してもらえない。会社の経営幹部に計画の提案をすることは、いくつかの面でニワトリを見本市に持っていくことに似ている。見栄えが最高に良くなるように、磨きをかける必要があるのだ」
カルキンス教授によるプレゼンのコツを、明日から2回、抜粋して掲載していく。
※第2回:プレゼンは緊張したほうがいい、人前で話すのに恐怖を感じるのは当然だ
『ニワトリをどう洗うか? 実践・最強のプレゼンテーション理論』
ティム・カルキンス 著
斉藤裕一 訳
CCCメディアハウス