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対談

50代の「オジサン」がAI時代を生き抜くにはどうすべきか?

2018年5月11日(金)16時35分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

新井 そうなんです。それに対してアメリカは、何でもすぐにやっちゃいますよね。ただそのせいで、ウーバーでの事故などが起きている現実があります。

また、韓国の場合であれば、今すごく流行っているアプリは、何にでもつながってしまうので、ローンを借りられるのか、お見合いをしてもらえるのか、といったことまでがSNS上のつながりの影響を受けるようになっているそうです。

一方、ヨーロッパはそういう安易な「後追い」はしないんです。ずっと老獪で戦略的です。「どんな社会を私たちは志向するのか」を起点に「何のためにAIを使うのか」「何が許容され、何は拒否されるべきか」を演繹し、イノベーションと共に法整備をしていくんですね。

加谷 なるほど。日本ではそういう議論はされていませんね。そんなことよりも、グローバルな競争の中で置いていかれるといけないから、とにかくAI......という風潮がますます強まっています。

海外に目を向けると、昨年6月にはグーグルが、ロボット開発企業のボストン・ダイナミクスとシャフトをソフトバンクに売却しましたよね。グーグルがロボット開発から撤退したということで、かなりインパクトのあるニュースでした。

新井 こういう動向は非常に重要で、グーグルでさえヒューマノイド(人型ロボット)は難しいと判断した、ということだと思います。

また、日本ではなぜかイーロン・マスク(テスラCEO)の株が高いように思うんですが、実際に工場に行ってみると、あまり売れていないという話も聞きます。やはり投資先行というか、ベンチャーキャピタルの意向もあるようで、開発の実態としてはまだまだ、という印象を受けました。

加谷 先生は本の中でも、シンギュラリティ(技術的特異点)は「到来しません!」と断言なさっていますね。

「特異点は近い」と述べたレイ・カーツワイル博士(人工知能研究の世界的権威)にしても、単にコンピューターのトランジスタの数が人間の神経細胞の総数よりも増える日が来る、と言っているだけで、本当の意味での、質的な特異点について述べているわけではないですよね。

新井 そうなんです。コンピューターが人間を超えるというのが、そんなに単純な話だと思いますか、と言いたいですね。

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加谷珪一(かや・けいいち)/経済評論家。1969年、仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。著書に『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト・アベノミクス時代の新しいお金の増やし方』(ビジネス社)、『お金は歴史で儲けなさい』(朝日新聞出版)など。弊誌ウェブサイトなど多くの媒体で連載を持つ Newsweek Japan

接客や介護より銀行員や会計士が「単純作業」

加谷 おそらく日本は、これからも移民をあまり受け入れない方向だと思うのですが、その一方で、若年層の人口は明らかに減ってきています。AIが単純作業は代替してくれそうですが、そこで職を失った人たちがAIにはできない仕事にすぐにシフトできるかというと、それは別の問題ですよね。

新井 まず、単純作業がAIに代替されると聞くと、多くの人が、例えば居酒屋の接客とか介護の仕事といったものを思い浮かべるんですが、どちらも決して単純作業ではありません。

加谷 確かに、介護は相当に複雑な仕事ですよね。それよりも、銀行員とか会計士とか薬剤師のほうが単純作業だと言えますね。

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