最新記事
経営

「集中力続かない」「ミスが増えた」...メンタル不調への対処は「睡眠負債」と「マルチタスク」がカギ

2024年5月30日(木)19時35分
日下慶子 ※経営ノウハウの泉より転載

組織としてメンタルヘルスケアを推進する

業務量や内容、職場での人間関係などの仕事に関することがストレスの原因になることも多いですから、個人の努力に任せるだけでは十分ではありません。

ストレスチェック制度が始まって数年が経ち、ストレスチェックの実施については、だいぶ馴染みのあるものになっているのではないでしょうか。今回は、もう一歩進んだ取り組みをしたいという企業のために、厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」についてご紹介します。

「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、4つのケアということで、①セルフケア、②ラインによるケア、③事業場内産業保健スタッフなどによるケア、④事業場外資源によるケアが提唱されています。

事業場の規模によって、どういうサポート資源が利用可能かについて制約があるかもしれませんが、ラインによるケアについては、上長と部下という関係性があればどのような組織でも実施可能です。

ただ、上長の方の役割や、何を期待するかについては設定しておき、研修などで対応方法を伝えることは必要です。

部下を持つ人、特に管理監督者に期待される役割としては、部下の様子をみて、健康問題の予兆があれば、ケアをする、あるいは適切な相談先につなげる、ということです。ケアというのは問題を解決したりアドバイスをしたりということではなく、あくまでも業務に関しての調整です。

たとえば、体調が悪くて業務効率が落ちているようであれば、一時的に業務量を減らす、あるいは、負担になっている業務や人間関係と距離を取れるようにするという調整です。

人事的な処遇や医学的なアセスメントに関しては、人事や産業保健職などの専門家に任せてもらってかまいません。

セルフケアに関する情報提供や、ラインケア体制の整備など、組織的にメンタルヘルスケアに取り組む場合は、できるだけ働く人のニーズに応じたサポート体制をつくれるよう、衛生委員会などで従業員のニーズをつかむことから始めてみましょう。

【参考】労働者の心の健康の保持増進のための指針/厚生労働省

最後に

今日は、集中力低下などのメンタル不調の徴候に気づく方法、セルフケアの方法、組織的にメンタルヘルスケアに取り組む際の情報源についてお伝えしました。

厚生労働省のサイト『こころの耳』には、さまざまな情報が集められています。読者の方の組織、会社、事業者に合った情報を選べる情報源ですので、ぜひ活用してみてください。

【参考】働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳/厚生労働省

[執筆者]
日下慶子
労働衛生コンサルタント
産業医
・精神保健指定医
・社会医学系専門医・指導医
2004年京都大学医学部卒業
アジア経済研究所開発スクール
京都大学大学院医学研究科(単位取得退学)
Parsons School of Designにて学ぶ。
専門は、公衆衛生(産業保健)、精神保健(地域精神保健、精神科救急)

※当記事は「経営ノウハウの泉」の提供記事です
keieiknowhow_logo200.jpg

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:ロシア防衛企業の苦悩、経営者が赤の広場で焼身

ワールド

北朝鮮の金総書記、24日に長距離ミサイルの試射を監

ワールド

ホンジュラス大統領選、トランプ氏支持のアスフラ氏が

ビジネス

エヌビディア、新興AI半導体開発グロックを200億
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中