最新記事
イギリス

「横暴な区長」を謝罪に追い込んだ「生活保護」シングルマザーたち...英国で実際に起きた事件を知っていますか?

2023年11月23日(木)17時12分
flier編集部

──たしかに、冒頭のシングルマザーのスピーチで貧困層の思いをぶつけられた直後、裕福そうな日本人記者・史奈子の視点に切り替わる流れが絶妙でした。史奈子が運動を冷ややかに見つめているからこそ、話に入りやすかったように思います。

日本で運動をすると、「変なことをやっている人」「面倒くさい人」というふうに偏見の目で見られがちですよね。公営住宅の空き家を占拠するというこの運動が、単なる不法行為を行っている、われわれとは考え方が違う国の人々の話と捉えられてしまったら、何も共感してもらえず、ヒントを得てもらうこともできないと思ったんです。だから、日本人の目線で道案内をしてくれるキャラクターを出すことにしました。

日本人は人権について教わっていない?

──本の中では、運動のつらい部分についても書かれていますよね。差別を受けたり、自己責任論にさらされたり。日本でも若い世代が似たような発言をしていて衝撃を受けたことがあります。「ホームレスになったのは自己責任だ」「どうして働かない人を税金で養わないといけないんだ」など。

日本でそういうことを言ってしまう人がいるのは、教育の影響も大きいかもしれないですね。この本でも史奈子が疑問に思っていますよね。貧しい人でも借りられてそこで生活できるような家賃を設定することは本当に政府の仕事なんだろうか、手頃な住宅を供給される権利なんて私たちにあるんだろうか、お金持ってる人が高い家賃を払っていい場所に住むのは当たり前のことで、お金のない人は出ていくべきなんじゃないかって。これは居住の権利を知らないということです。

私の世代は教わっていないんですけど、居住の権利というものが国際条約で認められています。日本でも憲法で「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が保障されていますよね。社会権規約委員会は、住居が適切な権利と言える条件として、「取得可能性」を挙げています。これは、家賃が手頃であることや、法外な値上げは許されないといったことが含まれています。こういうことって、うちの息子は中学校で習ったらしいんですよ。イギリスは、基本的人権とはどういうもので、私たちは国に何を保障させるべきなのかを学校で教えたうえで、「さあ、国がそれを保障していないと思うならかかってこい」みたいなところがある。

生活保護をもらっている人に対して、「自分が悪いんじゃないか」とか、「税金の世話になるべきじゃない」という人もいますけど、国は生存権を保障する義務があるからそうしているわけですよ。それが嫌なら国連を脱退しろって話になっちゃうわけで。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中