実質GDPが3期ぶりマイナス成長 家計の消費支出は7カ月連続減少、けん引役不在の日本経済
内閣府が発表した2023年7─9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比0.5%減、年率換算で2.1%減だった。東京都内で3月24日撮影(2023年 ロイター/Androniki Christodoulou)
日本経済を支える内需がさえない。2023年7―9月期実質国内総生産(GDP)は外需の下押し要因も重なり、成長率が3・四半期ぶりのマイナスに転じた。「デフレ完全脱却」を掲げて経済の立て直しを急ぐ岸田政権が、デフレ脱却を宣言できる環境とするには依然として距離がありそうだ。
けん引役不在の日本経済
7―9月期のGDPは物価変動の影響を除く実質で前期比0.5%減、年率換算で2.1%のマイナス成長となった。外需がけん引した4―6月期の高成長から一転して外需がマイナス寄与となり、内需も振るわなかった。
内需はコロナ禍からの回復の足取りが鈍い。内閣府によると、GDP全体では21年10―12月期にコロナ前のピーク(19年10―12月期)を上回ったが、個人消費は14年1―3月期(約310兆円)になお届いていない。
内需を両輪で支える企業の設備投資も、これまで最大だった19年7―9月期(約93兆円)に達しておらず、「景気が緩やかに回復しているという判断そのものに変化はないものの、けん引役不在の状況は否めない」と、政府関係者の1人は語る。
総務省が7日発表した9月の家計調査によると、2人以上の世帯の実質消費支出は前年比2.8%減となり、マイナスが7カ月続いた。家計では物価高の影響から足踏みが目立つ。
不透明感漂う原油動向
先行き10―12月期の実質GDPは「自動車の挽回生産やインバウンド(訪日外国人)需要の回復に支えられ、プラス成長に復帰する」(日本総研の後藤俊平研究員)との見方が多い。
もっとも欧米で金融引き締めの影響が強まれば輸出が伸び悩み、引き続き外需がマイナス寄与となる懸念は拭えない。暗雲漂う中国経済にも期待できず、内需でどこまで支えきれるかが焦点となる。
原油価格の不安定な動きもリスク要因となる。イスラエル・ハマスの衝突で軒並み原油先物価格が急騰したが、足元では一転して安い。オイルマネーの縮減が「アラブの春」と呼ばれる民主化運動に発展した過去もあり、泥沼化すれば、原油価格は再び騰勢を強める展開も予想される。
今のところはプラスを予想しているとはいえ、「原油価格が直近ピーク(1バレル=130ドル)まで上昇した場合、個人消費を年率で0.2%ポイント下押ししかねない」(前出の後藤氏)との懸念が残る。
来年半ば以降の判断か
GDPの公表に先立ち、政府は、所得税減税を含む17兆円台前半の経済対策を打った。経済押し上げ効果を実質GDP換算で19兆円程度と想定し、デフレからの完全脱却をうたう。別の政府関係者は「デフレ脱却の千載一遇のチャンス」と強調し、脱却宣言にこぎ着ければ政治的成果としてレガシーになる、としている。
とはいえ、デフレ脱却の4条件のうち、23年4―6月期に3年9カ月ぶりのプラスに転じたGDPギャップは今回、再びマイナスになることが予想され、先行きもゼロ近傍で推移する見通しだ。デフレに逆戻りする危うい状態からは脱しきれていない。
市場には「実質賃金のマイナスが続く現状では、好循環実現をアピールしにくく、来春のデフレ脱却宣言は難しいと政府が判断する可能性がある」(みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介・主席エコノミスト)との見方がある。
早くても24年6月の所得税減税で可処分所得が引き上げられ、実質賃金のプラスが視野に入る「来年半ば以降の判断となる可能性が相応に高い」と、前出の酒井氏は言う。
(山口貴也、杉山健太郎 編集:橋本浩)
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