最新記事

BOOKS

2、3冊の同時並行読みを15分──「5つの読書術」を半年続けることで表れる変化とは?

2023年3月1日(水)09時57分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

(5)同時並行読み──すきま時間で読む

万人に向くわけではないが、本は、何冊か同時に読み進めることも試してほしい。先ほど述べた、資料としての超速読ばかりではなく、カバー・トゥ・カバーでじっくり読む古典についても、同じだ。

一冊を読み終えるまで別の本を読めない、読まない人が、かなりの数いる。小説でいえば「あらすじがごっちゃになってしまう」ということがある。あるいは、集中して読み切ったほうが速い、たくさん読める、という人もいるだろう。

同時並行読みをすすめる理由は、速読のためというのもあるが、多ジャンルの本をまんべんなく読むため、という意味が強い。のちに書くが、①海外文学②日本文学③社会科学か自然科学、それに④詩集の四ジャンルくらいは、偏ることなく読んでいきたい、とわたしは考えている。

わたしの場合、ある本を15分読むと、ほかの本に移る。15分にあわせたキッチンタイマーを、書斎やリビング、食卓、風呂場にさえ用意してある。仕事の合間、リビングでコーヒーを飲むとき、食事をするとき、いずれも15分単位で本を読む。そしてそれは、全部違う本だ。

なぜ15分かというと、それより短くすると、小説でも社会科学、自然科学の本でも、意味のかたまりがとりにくくなる。また15分を超えると、こんどはインプットの時間をとるのが億劫になる。

読書は最低1時間続けたい。落ち着いて。お気に入りの喫茶店で──。そういう気持ちは、よく分かる。

しかし、そういう特別な1時間が空くまで読書をしないのならば、少なくともわたしにとっては、週に1回時間をとるのも、難しいかもしれない。猟師も百姓も、長時間労働なのだ。だからこそ、15分である。

仕事でひと息ついたとき。風呂。起きた直後。寝る前。15分のすきま時間ならば、工夫次第で、1日に数回はとれるだろう。どうせ細切れ時間になって集中が途切れてしまうのならば、いっそ違う本に。本のローテーション制、という発想だ。

ためしに2、3冊程度の同時並行読みを半年ほど続けてみてほしい。「速くなった」と実感できる人は、そのまま習慣に。「自分にはどうにも向かない」と確認できた人は、一冊読み切り読書でかまわない。ただし、多ジャンルの本を読むのは心がけたい。

伝説の速読家、芥川龍之介

ところで、速読が得意だった人は、だれだろうか。現代日本の作家では、司馬遼太郎、井上ひさし、大江健三郎、この三人が御三家であったといわれている。

もっと昔、伝説の速読家に、芥川龍之介がいる。食事中に書物を手放さないのはあたりまえ。来客中も本を片手に談笑しつつ、下を向いてページを繰っている。客は「ああ、またやってるな」と思ったそうだ。

英語も速読できた。「普通の英文学書ならば一日千二、三百ページは楽に読んだ」というのだから、にわかに信じられないほどの速読家だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米はテック規制見直し要求、EUは鉄鋼関税引き下げ 

ビジネス

ウォラーFRB理事、12月利下げを支持 1月は「デ

ワールド

トランプ氏、オバマケア補助金の2年間延長を検討=報

ワールド

元FBI長官とNY司法長官起訴、米地裁が無効と判断
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中