「オススメは全部」と言い出すラーメン屋は流行らない...佐藤オオキのブランディングの法則
1つ目は「オススメのメニューは1つの方がいい」というもの。醬油味も、塩味も、豚骨味も、全部オススメです、っていうお店にはこだわりが感じられにくく、熱烈なファンがつきにくいですよね。近所にあるとちょっと便利だからたまに利用するけれど、別になくなっても困らないお店、という少し悲しいポジションになりがちです。
いろいろなメニューがあること自体は別に問題ではありませんが、「オススメ」は絞り込まれている方がお客さんの満足度が高く、お店としてのポジショニングが明確化される気がします。
企業もこれと同じで、絞り込んだコミュニケーションが重要です。そして、できればそれが「他の人にはいえないこと」であることが理想的です。グローバル、サステイナビリティ、健全なガバナンス、地域密着型の〜、社会貢献型の〜、安心・安全の〜、といった言葉は誰にでも使うことができます。
こうしたものはブランドにとって「守り」の要素なので、もう少し深めの階層に潜ませておけばいいのです。ブランドを差別化させるためには、「自分たちにしかいえないたった1つのことを、自分たちらしくいう」ことが重要なのです。
他社にはない独自のサービスや技術をコミュニケーションの軸にするのでもいいし、仮にそうしたものがなかったとしても、「自分たちはこうなりたい」「こういうことを実現したい」といったビジョンを掲げるのも有効だと思います。
外からの見られ方と実態が乖離している場合は、それを補完するメッセージを発信するのも1つの手かもしれません。
ラーメン屋さんの法則の2つ目は、「1日〇〇食限定」「スープが終わり次第閉店」といった提供の仕方です。
そのお店で提供されるラーメンは常に美味しいという「信頼感」がすでにあることが前提として、ここに、必ずしもそれが手に入るとは限らないという「希少性」が加わることで、更なる期待感や充足感が生まれます。
企業は基本的に商品を「あればあるだけ、売りたい」もの。ところが、お客さんは「あればあるほど、欲しくなくなる」ものです。過剰供給によって信頼関係がマンネリ化する状態とでもいいましょうか。
どんなに魅力的なものであっても、他のみんながもっていたり、いつでもどこでも手に入ったりするとなると、その価値を知覚しにくくなるのです。商品であれ、情報であれ、「少し足りない」くらいのサジ加減で提供することがポイントともいえます。
ただ、この作用を逆手に取り、製造数を必要以上に抑えたり、限定品を乱発したりするようなブランドが散見されますが、そうした過剰な飢餓感を煽るような手法は、消費者に対する誠意が欠けているように自分の目には映るし、長期的な信頼関係を築くことは難しいと感じています。
「お店がちょっと汚い方が美味しく感じる」というのも、ラーメン屋さんの法則の1つです。