「ニーズを満たす商品」では売れない...消費者「優位」時代に生き残るブランドとは
SHIFTING LOYALTIES
「かつて(消費とは)、お金を払って、自分のニーズを満たすモノを手に入れる取引だった。でも今は、ブランドとの間で関係を構築する行為だ」と、市場調査会社ニールセンのエグゼクティブ・バイス・プレジデント(メディア分析・マーケティング効果担当)を務めるティナ・ウィルソンは語る。消費者は商品を通して、ブランドが体現するものに支持を表明する。「だからブランドと関わることで満足感が得られる」
ブランド・ロイヤルティーは、顧客に約束をするだけでなく、その約束を守ることで生まれると、ジョージタウン大学経営大学院のクリスティー・ノードハイム准教授は指摘する。重要なのは約束が守られることであって、高尚な約束である必要はない。韓国の現代自動車がいい例だと、ノードハイムは言う。
現代は、「われわれは最高だ」ではなく、「われわれは信頼でき、安定していて、便利だ」と訴えたと、彼女は言う。「コロナ禍のとき、現代はその信頼の約束と一致する行動を取った。失業した購入者から現代車を買い戻す方針を守ったのだ」
ブランドの立場と顧客の立場が一致していて、ブランドが顧客の味方だという感覚は、最近の消費行動とブランド・ロイヤルティーの変化に関する多くの研究で指摘されている。
実際、全米小売業協会によると、消費者の約44%は、自分の価値観に一致するブランドを選ぶという。同協会とIBMの共同調査によると、コロナ禍の到来以来、消費者の62%が、環境インパクトを減らすためにショッピングの習慣を見直すつもりだと答えた。マスターカードの調査でも、回答者の半分以上が、ショッピングによるカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)の削減を重視するようになったと答えた。
消費を牽引する新しい「原動力」
コンサルティング会社アクセンチュアが最近、22カ国の消費者2万5000人以上に行った調査は、もっと幅広い変化を示している。回答者の50%が、「コロナ禍により、自分の目的と、人生で重要なことを見直すようになった」というのだ。また、40%以上が、「コロナ禍により、自分自身よりも他人に目を向ける必要性に気が付いた」と答えた。
そんな状況で、ショッピングには単に自分の欲しい物を手に入れるだけでなく、正しいことをするための倫理的選択も含まれる。アクセンチュアの調査によれば、ブランド・ロイヤルティーの原動力として価格や品質は今なお残っている。その一方で、健康と安全、サービスとパーソナルケア、使いやすさと利便性、原産地、信頼と評判といった原動力も重要度を増しているという。
そうした新たな原動力に対応するため、多くのブランドが新しい機能やサービスを導入している。