最新記事

消費

「ニーズを満たす商品」では売れない...消費者「優位」時代に生き残るブランドとは

SHIFTING LOYALTIES

2022年2月24日(木)18時00分
メーガン・ガン

220301P42_SKD_02.jpg

コロナ禍でオンライン通販やデリバリーなど選択肢が広がり、消費者のブランド・ロイヤルティーは変化している MARKO GEBER/GETTY IMAGES

「かつて(消費とは)、お金を払って、自分のニーズを満たすモノを手に入れる取引だった。でも今は、ブランドとの間で関係を構築する行為だ」と、市場調査会社ニールセンのエグゼクティブ・バイス・プレジデント(メディア分析・マーケティング効果担当)を務めるティナ・ウィルソンは語る。消費者は商品を通して、ブランドが体現するものに支持を表明する。「だからブランドと関わることで満足感が得られる」

ブランド・ロイヤルティーは、顧客に約束をするだけでなく、その約束を守ることで生まれると、ジョージタウン大学経営大学院のクリスティー・ノードハイム准教授は指摘する。重要なのは約束が守られることであって、高尚な約束である必要はない。韓国の現代自動車がいい例だと、ノードハイムは言う。

現代は、「われわれは最高だ」ではなく、「われわれは信頼でき、安定していて、便利だ」と訴えたと、彼女は言う。「コロナ禍のとき、現代はその信頼の約束と一致する行動を取った。失業した購入者から現代車を買い戻す方針を守ったのだ」

ブランドの立場と顧客の立場が一致していて、ブランドが顧客の味方だという感覚は、最近の消費行動とブランド・ロイヤルティーの変化に関する多くの研究で指摘されている。

実際、全米小売業協会によると、消費者の約44%は、自分の価値観に一致するブランドを選ぶという。同協会とIBMの共同調査によると、コロナ禍の到来以来、消費者の62%が、環境インパクトを減らすためにショッピングの習慣を見直すつもりだと答えた。マスターカードの調査でも、回答者の半分以上が、ショッピングによるカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)の削減を重視するようになったと答えた。

消費を牽引する新しい「原動力」

コンサルティング会社アクセンチュアが最近、22カ国の消費者2万5000人以上に行った調査は、もっと幅広い変化を示している。回答者の50%が、「コロナ禍により、自分の目的と、人生で重要なことを見直すようになった」というのだ。また、40%以上が、「コロナ禍により、自分自身よりも他人に目を向ける必要性に気が付いた」と答えた。

そんな状況で、ショッピングには単に自分の欲しい物を手に入れるだけでなく、正しいことをするための倫理的選択も含まれる。アクセンチュアの調査によれば、ブランド・ロイヤルティーの原動力として価格や品質は今なお残っている。その一方で、健康と安全、サービスとパーソナルケア、使いやすさと利便性、原産地、信頼と評判といった原動力も重要度を増しているという。

そうした新たな原動力に対応するため、多くのブランドが新しい機能やサービスを導入している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、中国製半導体に関税導入へ 27年6月適用開始=

ビジネス

米耐久財受注、10月は2.2%減に反転 コア資本財

ワールド

米当局、中国DJIなど外国製ドローンの新規承認禁止

ビジネス

米GDP、第3四半期速報値は4.3%増 予想上回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    砂浜に被害者の持ち物が...ユダヤ教の祝祭を血で染め…
  • 6
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 7
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 8
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中