「ニーズを満たす商品」では売れない...消費者「優位」時代に生き残るブランドとは
SHIFTING LOYALTIES
コロナ禍でも消費者の購買意欲は衰えず店舗に求める基準は高くなった LISA MAREE WILLIAMS/GETTY IMAGES
<消費に対する考え方が大きく変わるなか、ブランド・ロイヤルティーのカギは顧客が賛同する価値観を示せるかどうかに移っている>
私たちはなぜショッピングをするのか。これはなかなか奥が深い問いだ。そこには経済や人口動態、好み、心理など複雑な要因が絡んでいる。2年以上にわたる新型コロナウイルス感染症の大流行は、常に変化するそのバランスを一段と揺さぶった。
ただ、はっきりしていることが2つある。コロナ禍によって、消費者の選択肢がこれまで以上に広がったこと、そして消費者の重視する要素に大革命が起きていることだ。
それはブランドにとってチャレンジであると同時に、チャンスでもある。消費者の行動が大きく変わっている今、どうすれば「選ばれ続ける」ことができるのか。どうすれば顧客の忠誠(ブランド・ロイヤルティー)を維持できるのか――。
「コロナ禍で、選択肢の広がりに関する消費者の意識は一段と高まった」と、全米小売業協会のシニアディレクター(業界・消費者インサイト担当)を務めるキャサリン・カレンは語る。ロックダウン(都市封鎖)が実施され、安全措置が次々に変わり、お気に入りの店が閉店するなかでも、消費者は新しいブランドを見つけ、新しいショッピング方法(置き配の指定や、店舗の駐車場での受け取りなど)を学んだ。
オンラインショッピングが広がっても、実店舗が消えることはなく、むしろ、これまで以上の魅力が求められるようになった。「消費者が店舗に求める基準が高くなった」とカレンは語る。「自分たちには多くの選択肢があることを知ったからだ」
消費者が見直す「なぜ買うのか」
その選択肢を消費者はあらゆるプラットフォームで活用した。ソフトウエア大手オラクルがアメリカの7500万世帯以上を調べたところ、2020年に新ブランドを試した世帯は43%と、前年の32%を上回った。
一方、経営コンサルティング会社マッキンゼーの調査によると、消費者が新ブランドを試す最大の理由は、入手可能性、便利さ、そして価値だった。なかでも半数近くは、「商品があったから、普段と違うブランドを試した」という、実に気軽な理由だった。お得価格だから、オーガニックだから、地元の店を応援したいから、という回答も見られた。
コロナ禍で、消費者は何をどう買うかだけでなく、なぜ買うのかも見直すようになった。消費行動の専門家によると、ブランドとの感情的なつながりや、個人的・社会的な目的意識が重視されるようになった。