最新記事

消費者

資本主義は「ボトムアップ型」に変わる、そこで求められる「5%」に入るには

2022年2月1日(火)11時18分
flier編集部

資本主義というルールを当てはめると、「こういう場合はこう」というパターンが何種類か決まってきます。同じようなモデルの、同じような製品が、同じ価格のレンジに収斂していきます。そうすると「あのキャベツは一玉198円、298円......」といった価格帯がさも正しいかのように見えてしまうのです。

しかし、その価格が正しそうに見えるのは、単に他のどれを見てもそうだから、ということに過ぎません。本来ならば、その価格について「地球のことを考えたか」、「燃費のことを加味したか」、「農薬のことは?」といろいろ聞きたくなるのですが、大抵の人が「え、キャベツは298円でしょう」と合意してしまうのです。合意できるようなファクトが、資本主義が染みついた現代社会には転がっています。

荒木:実際にプライシングを考えるとき、コストの積み上げで考えたり、顧客価値について突き詰めたりして妥当な線を探りますよね。消費について、長期的な目線でプ
ライシングするという観点はすごく大事だと思います。

一方、一歩踏み込んだ人が損をするような「囚人のジレンマ」に陥る恐れもありますね。

村上:おっしゃるように、囚人のジレンマのような部分もあります。消費は「今買う」という極めて刹那的な行為です。対照的なのが投資です。投資は基本的には「将来の価値がどうなるか」という長期的視点で考えます。「考える消費者」を増やすに当たり、今最も抜けている視点は投資的な思考です。

投資の対価について、人は換金性がないとリターンと思えないものです。例えば、地球環境にいいキャベツを買ったときに、リターンとして「子々孫々幸せに暮らせますよ」と言われても、それをリターンと思えない。その際、地球には価値がないという前提を無意識的に置いてしまっています。そこから見つめ直さないといけないでしょう。

未来をつくる経験

荒木:サステナブル資本主義の社会に向け、今後何をしていくべきか、何が実現のトリガーになっていくとお考えでしょうか。

村上:社会が一夜にして変わるということはあり得ません。私は実家が農家だったのですが、土地を肥えさせるのと同じように、消費を肥えさせるには時間がかかります。

まずやるべきは、どんなに小さくてもいいので、未来をつくれるという経験をすることだと考えています。募金や投資、働く場所が変わるなど、何でもいい。行動が未来に影響を与えることを意識していただきたいのです。

これから、持続可能な社会に向け、いろいろな産業構造の変化が起きてくるはずです。産業革命後にできた社会を、今一度つくり直そうという動きが出てきます。そこにはおのずと巨大なビジネスチャンスが巡ってきます。

ある人たちはその追い風を受け、恩恵にあずかるチャンスが生まれ、きっと未来をつくることに貢献していきます。貢献の仕方は、労働者としてなのか、投資家かサポーター、寄付者としてか、どういう形かわかりませんが、そうした機会が増えてくるはずです。その中で、地球の持続可能性というミッションに共感していく経験が増えていくことになるでしょう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏、ホワイトハウス夕食会に出席 トランプ氏と

ビジネス

米エクソン、ルクオイルの海外資産買収を検討=関係筋

ワールド

トランプ氏、記者殺害でサウジ皇太子を擁護 F35戦

ビジネス

ワーナー、買収案1株30 ドルに上げ要求 パラマウ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中