最新記事

消費者

資本主義は「ボトムアップ型」に変わる、そこで求められる「5%」に入るには

2022年2月1日(火)11時18分
flier編集部

荒木:3つの点で従来の資本主義と異なるのですね。よくわかりました。
サステナブル資本主義へ移行していく社会というのは、そうあってほしいという村上さんの願望なのでしょうか。それとも確実な変化の胎動と認識していらっしゃるのでしょうか。

村上: 願望ではなく、トップダウンからボトムアップ、短期から長期といったシステムに変わっていくと確信しています。ただ、私たちはグローバルな資本主義の世界に長く居過ぎるため、トップダウンによる意思決定の仕組みが刷り込まれ、思考停止してしまっています。

そうした「考えない」社会が変わるには、2つしかないと思っています。1つはイーロン・マスクやジェフ・ベゾスといった強力な個が社会を変えていく、というものです。ただ、懸念点としてはあまりに少数過ぎることです。そのごく少数の個に対し、特定の権力がガバナンスを利かすことにより、意見がコントロールされてしまう恐れも出てきます。

もう1つは、本書でも紹介した5%のような大衆のマイノリティが変えていくという流れです。政治の民主化はマジョリティが担いますが、経済の民主化はマイノリティ主導でよいと思っています。

荒木: なるほど。経済を民主化するマイノリティですか。

村上: 消費の世界において、5%が仕組みを、トレンドを変えるということは起こり得ると考えています。サステナブル資本主義が実現していくかどうかは、まさに「考える消費者」が増えるかどうかなのです。 その実現に当たり、日本に足りていないものは何でしょう。農業で例えると、種がないのか、人がいないのか、お金がないのか、耕作機がないのか。 私は「土地が肥えていないこと」だと考えています。日本には、種もトラクターもお金もあります。土地が肥えていない、言い方を変えれば「考える消費者」が少ないということです。

考える消費者

村上:「失われた30年」により、成功体験を持っている日本人があまりに少なく、自信喪失に陥っています。「あなたは未来を変えられますか」といった問い掛けをすると、多くの人は「考えたこともない」と答えます。これは、自分の行動が未来に影響しないと言っているに等しいのです。つまり、耕されていないということ、考える消費者がいないということにほかなりません。

荒木:「考える消費者」とは何か、課題はどこにあるのか、あらためてお聞かせください。

村上:私のキャリアを振り返ると、M&Aや投資、IPOなどさまざまな分野で、価格を考えたり、決めたりする仕事をしてきました。そうしたキャリアを踏まえ、価格が決まるプロセスの不確実性、曖昧さ、他方で絶対的なものについて、感度や経験を持っています。

そこから学んだのは、価格がいかに結果論であるかということです。「絶対的な解」というものが存在しません。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア製造業PMI、3月は48.2 約3年ぶり大幅

ワールド

ロシア政府系ファンド責任者、今週訪米へ 米特使と会

ビジネス

欧州株ETFへの資金流入、過去最高 不透明感強まる

ワールド

カナダ製造業PMI、3月は1年3カ月ぶり低水準 貿
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中