日本の官民連合、ミャンマーで不動産開発 毎年2億2000万円の土地賃料が国軍配下の国防省へ
JOIN、フジタ、東京建物が同事業のために設立した特別目的会社の監査済みの決算報告書によると、3社は2019年、180万ドルの賃料を支払った。シンガポール当局に届け出たこの報告書には、賃料の支払い先は記載されていない。ロイターは3社に金額の確認を求めたが、いずれもコメントを拒否した。
なお、Yコンプレックスは、フジタと東京建物の発表では当初は2020年の竣工を予定していたが、JOINによると、今年2月のクーデター発生を受け安全確保のため現在は工事を休止している。
日本の投資額は世界第5位
ミャンマーの投資企業管理局によると、同国に対する日本の投資額は世界第5位。過去5年間の総額は14億ドルにのぼる。日本政府はこの地域で中国の影響力が強まることを懸念しており、複数の関係者は、ミャンマーに対する資金支援や学術交流、災害救援の訓練などの防衛交流に取り組んできた意義を説明する。
国軍との経済的な関係が明らかになったことで、日本政府や企業はミャンマーとの関係見直しを迫られる可能性があると、人権団体はみている。ミャンマーでビール事業を展開するキリン・ホールディングスは2月のクーデター後、国軍系の複合企業ミャンマー・エコノミック・ホールディングスとの合弁を解消すると発表した。会見したキリンの磯崎功典社長はクーデターに言及し、「キリンの考える人権尊重の考えに反する」と語った。
外交や安全保障が専門の多摩大学大学院の井形彬客員教授は、「JOINやJBICだけでなく、日本という国にとって深刻なレピュテーションリスク(評判による企業にとってのリスク)になり得る」と指摘。「人権侵害をする者とビジネスを続ける国だと思われかねない」と話す。
米商務省は3月上旬、ミャンマー国軍の支配下にある国防省と内務省に制裁を科した。米財務省はミヤ・トゥン・ウー国防相、その前任者などにも制裁を科した。
ジャスティス・フォー・ミャンマーやヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権団体は2月17日、国連の人権高等弁務官に対し、この土地開発事業と国軍の関係を調査するよう要請した。国連の広報担当者は嘆願書を受け取ったとしたが、それ以上はコメントしなかった。
JBICを所管する財務省にロイターが質問を電子メールで送ったところ、JBICに問い合わせるよう指示された。JBICは融資について「我が国の外為法に基づく適法性の確認を行うことに加え、他国の経済制裁との関係で特段問題ないことを事前に確認した上で、その意思決定を行っている」と回答。ミャンマーの状況を注視しているとした。
JBICが2018年に発表したニュースリリースによると、融資は三井住友銀行、みずほ銀行との協調で実施。両行ともロイターの問い合わせにコメントを控えた。
Yコンプレックスに対する今後の関与についてJOINの担当者は、コメントを避けた。現在の状況については「悩ましい。難しい」と述べるにとどめた。
フジタと東京建物はそれぞれ電子メールで回答し、状況を注視しながら関係者と協議し、対応を検討するとしている。
(Ju-min Park John Geddie 日本語記事作成:久保信博 編集:田中志保)
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