最新記事

ホテル

新型コロナウイルスで客足遠のいたホテル業界、「五輪特需」も消えて存亡の危機

2020年3月29日(日)11時11分

新型コロナウイルスの影響で大阪市にある「コロナホテル」は客足が遠のき、朝食用のビュッフェは空。3月19日撮影(2020年 ロイターS/Mari Saito)

「大阪コロナホテル」はここ数週間、気味が悪いほど静かで空き室だらけだ。

「名前に関しては非常に残念なところですよね」。営業担当の藤井康平さんは、がらんとしたロビーのカフェでため息をついた。

例年、春は企業が新入社員を迎え、会議室やバンケットルームを借りてセミナーや歓迎会を開くため、最も忙しい時期だという。

大阪市の新大阪駅から徒歩2分という好立地にもかかわらず、今年の予約は昨年の3分の1にまで落ち込んだ。今夏に予定されていた東京五輪・パラリンピックの延期も観光に依存する中小企業、そして日本経済にとって壊滅的な打撃になりそうだ。

新型コロナウイルスの感染拡大で日本への旅行者が減り、全国で経済活動が低迷している。利用客の大幅な減少に直面しているのは、不運な名前のコロナホテルだけではない。

建設ブームに沸いていたホテル業界に対しては、コロナウイルスの感染が広がる前からその持続性を疑問視する声が出ていた。

「開発が進み、とてつもない数の客室がここ数年間で増えている」と、藤井さんは話す。「運営が持たないホテルが必ず出てくると思う」

7年前に就任した安倍晋三首相はアベノミクスの柱の1つに観光を掲げ、2020年までに年間4000万人、2030年までに6000万人の訪日客を誘致する野心的な目標を打ち出した。

その中で東京五輪の準備を積極的に進め、カジノを合法化し、ホテル開発などに外資を誘致した。昨年は3190万人の外国人が日本を訪れ、4兆8100億円を支出していった。

しかし、新型コロナウイルスが195カ国に広がり、世界で1万6000人以上が死亡、そして五輪の開催延期が決まった今、その目標は達成不可能になりつつある。

2月の訪日外国人客数は前年同月比60%近く減少し、すでにアナリストらは日本の観光産業にとって壊滅的な年になると予想している。

みずほ総合研究所の宮嶋貴之・主任エコノミストは 、2020年には3400万人の外国人観光客が日本を訪れると予測していたが、もはやそれは無理だと指摘する。

ホテル資産に焦点を当てた不動産信託、Invincible Investment Corp. 、いちごホテルリート 、ジャパン・ホテル・リート などは、これまでに60%近く下落しており、東京証券取引所のREIT指数の31%より下落幅が大きい。  

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中