最新記事

アメリカ経済

FRBパウエル議長、利下げ確約せず トランプはツイッターで「口撃」

2019年8月24日(土)08時15分

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、FRBは足元の景気拡大を維持すべく「適切に対応」すると表明する一方、今後FRBがどれほど速いペースで利下げを行うのか手掛かりを示さなかったため、トランプ米大統領はパウエル議長を批判した。写真はパウエル議長とトランプ大統領。ワシントンで2017年11月撮影(2019年 ロイター/Carlos Barria)

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は23日、ワイオミング州ジャクソンホールで開催中の経済シンポジウムで講演し、FRBは足元の景気拡大を維持すべく「適切に対応」すると表明した。ただ、今後FRBがどれほど速いペースで利下げを行うのか手掛かりを示さなかったため、FRBに対し繰り返し利下げ圧力を掛けているトランプ米大統領は痛烈にパウエル議長を批判した。

パウエル議長は講演で、米経済は「良好な立場」にあるとの認識を示しながらも、米中貿易戦争に起因するマイナスの影響など「著しいリスク」に直面しているとした。貿易戦争が企業投資や信頼感への障害となり、世界経済の悪化につながったとすれば、FRBはすべてを金融政策で修正することはできないとし、「現在の状況に対する政策対応の指針となる直近の前例は存在しない」と指摘。金融政策が「国際貿易に対して整ったルールブックを提示することなどできない」と述べた。

議長は1990年代の一連の利下げで景気拡大が維持されたことには言及したものの、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げを行うかについては明言を避けた。FRBの次の一手に関してFRB内で見解の相違が顕著になっている情勢を反映した格好で、FRBは9月のFOMCで追加利下げを決定した後も年内数回の利下げを実施すると予想している投資家が肩透かしを食らった可能性がある。

FRBは7月30─31日のFOMCで、2008年以来初めてとなる利下げを決定。パウエル議長はFOMC後の記者会見で、この利下げは「サイクル半ばにおける調整」的な性格を持つと説明。利下げサイクルの開始であるとはみていないとの立場を示していた。

パウエル議長のこの日の講演に対しトランプ大統領は痛烈に批判。「FRBは相変わらず何もしていない!」とし、「パウエルFRB議長と中国の習近平国家主席のどちらが米国に対するより大きな敵なのか」とツイッターに投稿した。

トランプ氏はこのほか、中国商務省が対米報復関税を発動すると発表したことを受け、米企業に対し中国から事業を撤退させ、米国内での生産を拡大するよう要請。われわれに中国は必要ない。率直に言えば、中国がいない方が状況はましだろう」とツイートした。

市場はパウエル議長の講演そのものには大きく反応しなかったが、トランプ氏のツイートには反応し、株価下落、国債価格上昇(利回り低下)などの動きが出た。ステート・ストリート(ボストン)のシニア世界市場ストラテジスト、マービン・ロー氏は「トランプ氏の中国に関する最新のコメントを受け、米経済が景気後退(リセッション)に陥るとの懸念が台頭した。ドル相場や米国債利回りの動きはこうした懸念を如実に反映している」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中