最新記事

デザイン

「上に行くエスカレーター?」と迷わせたら、デザインの負け

2015年11月20日(金)16時05分

 迷いをなくす、というねらいであれば、「扉」という元のプロダクトの常識や形状にこだわらなくても目的が果たせます。この学生のデザインはありがちな壁を打ち破って評価を集めた好例でした。

 ビニール傘にも迷いのバグが発生します。傘立てに入っているとどれも同じで、自分の傘がわからなくなります。そこであるプロジェクトで考えたのはビニール傘のカスタマイズでした。手頃な値段でもビニール部と持ち手のデザインを選ぶことができるようにし、同じ組み合わせに出会わないくらいの組み合せで展開させるのです。これも解決法の一つです。

使えなくなるパーティ会場のグラス

 立食パーティなどでグラスを受け取って、ずっと持ち続けている人は少ないでしょう。しかし一度テーブルに置いてしまうと、自分のグラスがわからなくなります。

予備のグラスは準備されていますが、そのたびに新しいグラスを持ってくるとテーブルの上は持ち主がわからないグラスだらけになってしまいます。

kouibook151120-b.jpg

一度テーブルに置くと、自分のグラスがわからなくなり、使えなくなるパーティ会場のグラス(『問題解決に効く「行為のデザイン」思考法』より)

 このバグを解消するために生まれたのはマーキングするためのプロダクト、グラスマーカーです。グラスの目印になるアイテムをつければ、すぐに「自分のグラス」と認識できます。そもそも、すべてが同じカタチのグラスである必要はないのです。

 ヨーロッパのパーティで見たのは、受付時に吸盤でくっつくキャラクターマーカーを配布する方法でした。吸盤はしっかりとガラス面につくので、グラスを見失うことがありません。一二種類ほど、色とりどりの小さな吸盤付きキャラクターが選べました。

 迷わせないために、視認性が高いアイテムを付属させる、アイテムにもバリエーションを出して楽しませる、というのがこのバグの代表的なソリューションです。

行かないとわからない、エスカレーターの向き

 ショッピングセンターや駅の構内で「上に上がろう」とエスカレーターに近づいたら上階からの「下り」だった、という失敗はありませんか。

 遠目でエスカレーターが見えていても、機械の前へ行かないとどちらの方向へ動いているのか確認できないことがあります。これもユーザーが進もうとする流れを止めてしまう迷いのバグです。

 やはりエスカレーターの設置を考える際にユーザーの動線と行為を一つずつ確認して、行為が流れるよう工夫する必要があります。建物のどこで、どんなときに、ユーザーはエスカレーターの存在を探すのでしょうか。そのとき、どんな行動をするのでしょうか。どこで迷い、どんな案内があれば迷わずにすむのでしょうか。これらを見越してデザインしなければいけません。

 迷いやすい場所でも遠くからわかるように視認性が高いピクトグラムをつければ、ユーザーがわざわざ目の前まで来て逆戻りするような迷いのバグはなくなります。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ANAHD、社債型種類株で2000億円調達 航空機

ワールド

印首都の車爆発、当局がテロとの関連含め捜査中 少な

ビジネス

午前のドル一時154円半ば、リスクオンで9カ月ぶり

ビジネス

米オキシデンタル、第3四半期利益は予想上回る 生産
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中