最新記事

経営

値上げが中小企業を幸せにする4つの理由(前編)

2015年10月20日(火)16時37分

 しかし、値上げをした店や会社は違います。粗利がしっかりと確保できているので、少しくらいの失敗を恐れずに広告宣伝費や販売促進費を使うことができます。その結果、自分の店や会社、商品に合った方法を見つけることができ、さらに売り上げを伸ばすことができるようになります。

 値上げして粗利を増やし、その一部を広告宣伝費や販売促進費にあててさらに売り上げを増やし、さらに粗利を増やすという良い循環が起こるのです。

 実は、ある程度の規模を持つ会社の多くは、新商品を販売する際に、最初から数%の広告宣伝費や販売促進費を計算に入れて値段をつけています。つまり、それらを計算に入れない店や会社に比べ、最初から値上げした値段をつけ、その一部をこうした経費に振り向けるしくみがあるから、大規模に売り上げを伸ばせるのです。

 こうした会社と同じように、自分の店や会社の売り上げを伸ばしたいと思うなら、同じように広告宣伝費、販売促進費を計算に入れなければなりません。つまり、その分の値上げをしなくてはならないということなのです。

 ここで、ひとつだけ注意してほしいことがあります。

 先ほど、売り出しなどで「少しだけ値引きする」ことも販売促進のひとつだと紹介しました。値上げをテーマにしたこの本で、値引きの話が出てくると少し変に感じるかもしれません。

 でも、この本でこれから説明していく「値上げ」と、販売促進のための「少しの値引き」は矛盾するものではありません。根本的に値上げをするからこそ、きっかけ作りのために少し値引きをする余裕が生まれるというのが、この本の考え方だからです。

 以前に、紳士服チェーン店の売り出しや、インターネットでクーポン券を販売するクーポンサイトなどで、販売価格(正価)を倍にして半額セールをする、つまり実際は普段の価格のまま安売りをしているふりをした販売方法が問題になったことがあります。これは景品表示法という法律で規制されている二重価格という価格の不当表示に当たり、非常に問題のある手法でした。

 この本での考え方は、このようなものではありません。まず値上げして、その価格で売れることを目指す。ただし、お客さんが買うきっかけを作るために、一時的に販売促進の値引きを併用するということです。

 販売促進の考え方や手法について、ここでは詳細は省きますが、広告宣伝費や販売促進費は店や企業が成長するために重要な要素で、それを捻出するためにも値上げが必要になるということだけは知っておいてください。

※値上げが中小企業を幸せにする4つの理由:後編はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米IT大手、巨額の社債発行相次ぐ AI資金調達で債

ワールド

トランプ政権、25年に連邦職員31.7万人削減 従

ワールド

米、EUにデジタル規制見直し要求 鉄鋼関税引き下げ

ビジネス

情報BOX:大手銀、米12月利下げ巡り見解分かれる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中