最新記事

株式市場

「中国発ブラックマンデー」は杞憂?

中国経済失速の兆候には事欠かないが、正反対の見方をするエコノミストもいる

2015年8月26日(水)15時48分
コナー・ギャフィー

チャイナ・ショック 世界的な株安連鎖はどこまで拡大するのか Issei Kato - REUTERS

 8月25日、上海株式市場が前日から7.63%下落。前日の8.5%安に続き2日連続の急落だ。今年の最安値を記録した。世界の株価が記録的な大暴落を演じた1987年のブラックマンデーの再来を恐れる声もある。中国株の下落と世界的な株安連鎖はどこまで続くのか。

 上海総合株価指数は、中国当局が買い支えで死守するとみられていた3000ポイントを割り込み、投資家はパニック売りに走った。日本や欧米にも株安が連鎖し、一時はまさに世界同時株安の様相だった。

 前触れはあった。中国政府は8月半ばに人民元を3度にわたって切り下げた。輸出の落ち込みを通貨安で乗り切ろうとしたとみられ、そこまで中国が追い詰めらたとは思っていなかった投資家の間に衝撃が走った。人民元の切り下げは、通貨の切り下げ競争に火を付ける可能性もあった。

 中国経済の失速を示す統計には事欠かない。7月には輸出が前年比8%以上落ち込み、工業生産と固定投資にブレーキがかかっている。政府と民間を合わせた債務はGDPの3倍近い27兆ドルにものぼるとされ、株価の底支えには推定3000億ドルを投じて失敗している。投資家の間には、中国政府は景気失速に適切に対処できないのではないかという不安が広がった。

中国経済は「回復基調にある」

「今年の世界経済にとって、中国の脆弱さが最大の脅威だ」と英シンクタンク、オックスフォード・エコノミクスのガブリエル・スタインは言う。「だが、中国以外の国々はかなり良くなってきている。(リーマンショックが起きた)2008年の再来とはならないだろう」

 またキャピタル・エコノミクスの中国エコノミスト、ジュリアン・エバンスプリチャード(シンガポール在住)は、中国経済に対する懸念はこれまで誇張されてきたという。貸し出しの増加や財政支出拡大など、中国の主要な経済指標を見れば、その多くは景気の回復基調を示していることがわかる。「見通しが変わり、中国悲観論が少なくなってくれば、市場の動揺も収まるだろう」

 エバンスプリチャードは、中国の株価は実体経済と「相当に乖離している」と指摘する。株に投資している中国人は比較的少ないため、株価の変動が一般世帯に与える影響は限定的だという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中