最新記事

インド

モディの改革は世界経済を救うか

腐敗と規制だらけの経済にメスを入れる構造改革がインドを中国に変える日

2014年7月25日(金)12時28分
ザカリー・カラベル(政治経済アナリスト)

有言実行 選挙で公約したとおり抜本的な経済改革に乗り出したモディ首相 Mukesh Gupta-Reuters

 インドのナレンドラ・モディ首相の新政権が先週、発足後初となる予算案を発表した。

 モディは選挙のときからインド経済の抜本的な構造改革を唱えていた。またモディ率いるインド人民党(BJP)はヒンドゥー至上主義政党とみられてきたが、首相としては世俗的で現実的な統治を期待されている。それだけに予算案の内容には大きな注目が集まっていた。

 インドはかつて、「次に爆発的な成長を遂げる国」として大いに注目を浴びていた。ところがあるときを境に、まるでエンストを起こしたかのように成長のペースが落ちてしまった。

 だがモディの改革で世界経済への統合が進めばインドは今後10年のうちに、00年以降の中国と同じくらい力強い世界経済のエンジンになるだろう。

 高度成長が始まる前の中国は、ひと儲けしようとやって来た外国人の夢が無残に砕け散る国だった。20世紀のほとんどの間、中国に進出した欧米企業や投資家は悲惨な目に遭って撤退を余儀なくされた。

 ところが92年に改革開放政策に再び重点が置かれ、01年にWTO(世界貿易機関)に加盟すると、中国経済は年平均10%のペースで成長を遂げるようになる。世界でも群を抜く原材料と工作機械の輸入国となり、世界有数の製造業と世界最大の消費市場のある国になった。

 インドがこれからの10年で同様の成長を実現できれば世界、とりわけアメリカの経済は予想以上の力強い後押しを受けるだろう。

 インド経済は長年、大きな問題に苦しんできた。時代遅れの経済政策と腐敗の蔓延、そして非効率的な役所仕事が経済活動にマイナスの影響を与えてきた。こうした問題への国民のいら立ちが、BJPが地滑り的勝利を収める大きな原因となった。

 しかしモディ首相が誕生しても、インド経済の見通しが劇的に好転したわけではない。世界銀行は依然として、今年度のインド経済の成長率は5・5%、来年度は約6%と予測している。

 WTO加盟前年である00年の中国の人口は、現在のインドとほぼ同じ12億人余り。当時の1人当たりGDP(購買力平価換算)は中国が2800ドルで、インドは2000ドルだった。その差は今、1万1900ドルと5400ドルまで広がっている。

 00年当時は、中国もインドも世界経済に大した貢献はできないとみられていた。だがその後の10年で、中国はIMF(国際通貨基金)の予測を覆して、莫大な外貨準備を蓄え、巨額の米国債を保有し、世界一急成長を遂げる消費市場を持つ国に成長した。

 その過程で、中国はゼネラル・エレクトリック(GE)やナイキ、ラルフ・ローレン、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)など幅広い分野のアメリカ企業に市場を提供した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米アトランタ連銀総裁、任期満了で来年2月退任 初の

ワールド

トランプ氏、12日夜につなぎ予算案署名の公算 政府

ワールド

イランの濃縮ウラン巡る査察、大幅遅れ IAEAが加

ワールド

世界原油需給、26年は小幅な供給過剰 OPECが見
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 3
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働力を無駄遣いする不思議の国ニッポン
  • 4
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 10
    「麻薬密輸ボート」爆撃の瞬間を公開...米軍がカリブ…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中