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エネルギー新時代
液化石炭からトリウム原発まで「ポスト原発」の世界を変える技術
ウランいらず「トリウム原発」の可能性
原子炉の燃料として使えるトリウムは、プルトニウムを焼却しながらエネルギーを生産する。効率的に発電できて核拡散にもつながらない「夢の燃料」は次世代型原発の切り札になるか
突破口を探せ ロシアの研究所ではトリウム燃料の原子炉への応用を実験している Courtesy Thorium Power Ltd.
現在、世界のあらゆる原子炉では、ウラン燃料の核分裂の副産物としてもれなくプルトニウムが生成される。目下、数十基の原子炉が(大半は途上国で)建設中であることを思えば、核兵器の重要な構成要素であるプルトニウムがイランや北朝鮮、そしてアルカイダのようなテロ組織の手に渡るのを防ぐことは緊急課題だ。
こうした事態は回避できたはずだった。アメリカ初の商業用原子炉で使われたのは、軍事転用可能な物質を生成しない「トリウム燃料」だったのだから。しかし冷戦中の50年代後半には、ウラン燃料への移行がある意味で理にかなっていた。当時は旧ソ連に対抗して保有核兵器を増強するため、プルトニウムの生産が望まれていた。
そして今、世界にはプルトニウムがあふれている。日々新たなプルトニウムを生み出す原子炉は頭の痛い問題になっている。
既存の原子炉にも比較的容易に応用
北朝鮮は同様のプロセスを使って、核兵器を製造できるだけのプルトニウムを生成した。野放しにすれば、事態はますます悪化する。原子力発電は火力発電に代わるクリーンな選択肢になり得るが、軍事転用が困難な燃料だけを使うよう訴えていかなければ、核拡散のリスクは残る。
今後の対策として最も有望なのは、50年前に「選択しなかった道」へ立ち返ることだ。トリウムはウランよりはるかに豊富で、元素そのものは兵器の製造に使えない。ここ数十年で科学・技術面の研究もかなり進んだ。トリウムを利用する技術の多くはプルトニウムと濃縮ウランを消費するため、貯蔵されている軍事転用可能な物質を大量処分する助けにもなる。
アメリカとロシアは2000年、大陸間弾道ミサイルの大幅な解体と、その結果生じるプルトニウムをそれぞれ34トン処分することに合意。今のところ、兵器の解体はプルトニウムの処分を大きく上回るペースで進んでいる。この問題を解決しようと、モスクワのクルチャトフ研究所をはじめロシアの研究機関は、アメリカのトリウム技術を国内の原子炉に応用しようとしている。
本格的に稼働すれば、プルトニウムを焼却処分しながらエネルギーを生産できるようになる。この技術は次世代型原子炉だけでなく、既存の原子炉の大多数にも比較的容易に応用できるという。
もちろん、技術的な解決策だけで核拡散の脅威を消し去ることはできない。問題に歯止めをかけるには全当事者が真剣に、政治的かつ外交的な議論を行う必要がある。