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民衆が次々と蜂起する
中東の地殻変動を読み解く
中東革命、世界の大いなる勘違い
現在の中東情勢の本質を鋭く表現した動画がインターネット上で話題になっている。まったく理解不能な赤ちゃん言葉で会話している(ように見える)双子の赤ん坊の映像に、香港で広告関係の仕事をしているグレッグ・サトクリフというイギリス人が絶妙な字幕を付けたものだ。
字幕によれば、片方の赤ん坊は、リビアの独裁者ムアマル・カダフィを「ひねりつぶす」べきだと強硬に主張。もう片方の赤ん坊は、軍事作戦を切り上げる「出口戦略」がないこと、反政府派に提供した武器が国際テロ組織アルカイダの手に渡る可能性に懸念を示す。
2人の議論は堂々巡りで、結論が出ない。欧米の政治指導者や専門家の間で繰り広げられる議論そのものだ。
民衆革命運動がアラブ世界に拡大するなか、揺るぎない地位を築いていたはずのアラブ諸国の統治者たちと、彼らを支持してきた欧米の指導者たちは、いま途方に暮れている。どう行動すべきかも、何を語ればいいかも分かっていないように見える。
この4カ月近く、中東では激動の日々が続いている。まず、チュニジアとエジプトで民衆が民主化を求めて立ち上がり、独裁体制が崩壊した。
リビアでは、カダフィ政権が反政府デモを武力で弾圧。それに対抗して3月19日、欧米がリビアへの空爆を開始した。しかしNATOの軍事介入は中途半端なものにとどまり、戦況は膠着状態に陥っている。
欧米諸国の危うい過信
バラク・オバマ米大統領とデービッド・キャメロン英首相、ニコラ・サルコジ仏大統領は先週、共同で新聞に寄稿し、カダフィ退陣まで軍事作戦を続けると表明。一方、カダフィは首都トリポリで支持者の歓声に応えるなど、健在ぶりをアピールしている。このままでは、国家が分裂する可能性もある。
バーレーンでは政情不安が高まり、同じ王制のサウジアラビアが軍を派遣。イエメンでも反政府デモが活発化し、独裁者のアリ・アブドラ・サレハがアラブ世界で孤立化する一方、アルカイダが混乱に付け入る動きを見せている。
シリアでは、ここ30年ほどで最大規模の反政府デモが発生。ヨルダンの状況も極めて不安定に見える。パレスチナの人々は自治政府に対するいら立ちと、イスラエル軍の爆撃に対する怒りを募らせている。イランの体制側は、09年6月の大統領選後のような大規模な反政府デモが再び起きることを恐れている。
こういう状況の中でも、欧米諸国の政府は、独裁者なり反体制派なりを押しつぶして情勢を沈静化させることが可能だと楽観しているように見える。